呼吸する和紙

 空気や光を透過する軽やかな風合いが印象的な佐藤友佳理氏の手漉(す)き和紙。日本建築だけでなくモダンな空間にも合う新しいデザインが、国内外から注目されている。

内田繁 茶室「識庵」

 「今の人々の暮らしに合うデザインを考え、和紙の可能性をもっともっと広げていきたい」

 モデルとして華やかなキャリアを積んだ後、地元の和紙復興プロジェクトに関わることになり、伝統工芸の世界へ飛び込んだ。従来の手法とは異なる新しい手法で一枚一枚丁寧に漉き上げられた佐藤さんの作品は「呼吸する和紙」と呼ばれる。楮(こうぞ)にゼオライトという物質を溶け込ませた特殊な原料を用い、紙の糸を幾何学模様に張り巡らせた木枠で直接漉くという方法で、繊維の重なりに濃淡が生まれ表情豊かな和紙になるのだという。

写真提供:内田デザイン研究所

 「伝統は古いものを守るだけでなく、革新の積み重ねでもあると思います。和紙の世界に新しい風を吹き込むこと。それが私の役割だと思いながら和紙づくりに取り組んでいます」

 水や空気のきれいな地元のアトリエでの創作の時間を何より大切にしている。

 「伝統工芸は使われ続けることで次の時代の伝統になるのだと思います。古くからの手漉き和紙の技を守り続ける職人の方たちと互いに刺激し合い、リスペクトし合いながら、業界全体を盛り上げていけたらうれしいですね」

佐藤友佳理(さとう・ゆかり)

和紙デザイナー

愛媛県生まれ。ロンドンでモデルとして活動した後、東京のデザイン学校を卒業。在学中から手漉き和紙の産地として知られる地元・愛媛県内子町の五十崎(いかざき)和紙復興プロジェクトに参加。2010年から地元で新しい手法による和紙づくりを始める。12年にアトリエを西予市明間(あかんま)に移し、和紙を使った建具やタペストリー、雑貨などのデザインと製作を行っている。
http://www.requ.jp/