「マーケティング・ミックス・モデリング」

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 企業の広告活動や販促施策、競合動向、需要の変動性など、様々なマーケティング要因が、売り上げなどマーケティングの最終目標にどう関係し、影響しているかを統計的に数値モデル化する手法のことである。

 デジタルメディアの発展に伴い、マーケティング施策が多様化・複雑化していく中で、その投資をいかに適切に設定し、配分するべきかという課題を意識する企業が近年増加している。こうした課題への対応として最近注目されているのが、多様なマーケティング施策の効果を可視化するマーケティング・ミックス・モデリング(MMM)という手法である。
  このようなアプローチは過去にも存在していたものではあるが、「ビッグデータ」が様々な場面でうたわれる現在、市場や生活者の取得可能なデータが飛躍的に増大している背景もあり、改めてマーケティング投資最適化の問題を解決する手法として期待されている。

 具体的なアプローチとしては、売り上げなどのマーケティング目標に影響していると考えられる多数の要因を「時系列データ」として蓄積し、統計的手法によって「要因間の関係を表現するモデル式」を導き出すことで、各要因の相互関係や影響度合いを明示するという手法が主流とされる。

 分析に使用する要因データは多岐にわたり、テレビ・新聞・ラジオ・雑誌・交通・インターネットなどの「広告出稿データ」やPOSデータなどの「実購買データ」などに加えて、最近では「ソーシャルメディア上の反響数」などを変数に組み込む試みがある。さらに商品カテゴリーによっては、天候や経済指標など、マーケティング施策外の要因も、マーケティング目標に影響を与える変数として取り込むモデリングも考えられている。現実のマーケットの複雑な事象を表現するモデル式についても、従来から活用されてきた重回帰分析や共分散構造分析だけではなく、柔軟な推定ができるベイジアンモデリングを使ったアプローチが注目されはじめている。

 こういった手法を活用することで、例えば広告展開などの様々なマーケティング要因が、売り上げなどの最終目標やブランド認知や購入意向など中間指標なども含めて直接的・間接的にどのような効果を与えているかを構造化して表現することが可能になる。(下図参照)

図―1

図―1

 これらの要因の因果関係をモデル化し、適切なパラメーター(係数)を算出することで、各施策の貢献度を導くことがMMMの主な目的だが、これを行うことによって、「各要因の横断的なインパクトの把握(例えばテレビ広告とインターネット施策の相乗的なクロスメディア効果の把握)」「過去データを基にした将来予測(例えば来期の設定予算水準に対する集客や売り上げの変化予測)」、さらには「投資配分の最適化」の実現などが期待されている。

藤原将史(ふじはら・まさふみ)

博報堂DYメディアパートナーズ データドリブンビジネスセンター ROIマネジメント部 部長

大広に1991年に入社後、テレビスポット、タイム、デジタルメディアなどのメディアバイイングを担当。2000年ごろからプランニング業務に携わり、03年博報堂DYメディアパートナーズ設立以降もトイレタリー、飲料メーカー、金融企業など多数のクライアントのメディアプランニングに従事する。現職では、多様化するデータを活用した統合メディアプランニングとコミュニケーション投資に対するROIを明示化する新たな手法の開発を進めている。