ブランドジャーナリズムが築くタッチポイント 顧客との新たなコミュニケーション手法

ネット上ではランキングをはじめとした〝使える情報〟がページビュー数を稼ぎます。しかし、そればかりだと消費されるだけで、顧客からのブランドイメージを向上しにくいという現実があります。
ブランド認知から顧客とのコミュニケーションを継続させるために効果を発揮するのが最近、注目されている「ブランドジャーナリズム」です。〝使える情報〟でありつつ社会課題にもつながる、新たなマーケティング手法であるブランドジャーナリズムについて解説します。

朝日新聞が運営するウェブメディア「withnews」の編集長を8年つとめてわかったことの一つが、「ランキング記事は読まれる」です。人気のラーメン店から、就職に強い大学、移住先の外国まで……ネット上には様々なランキング記事があふれています。

ランキング記事はなぜ読まれるのか。それは、具体的な見返りが期待できるからです。つまり〝使える情報〟だと認識してもらえる。これは、損をしない、失敗を回避するための情報と言い換えることができます。
2021年の書籍の年間ベストセラーで2位になった『スマホ脳』(久山葉子訳 新潮新書)の著者、アンデシュ・ハンセン氏は、外敵の脅威から身を守るため「負の情報」を積極的に集める人類の習性は、スマートフォンが発達した現代も変わっていないと説いています。

人々の関心を本能レベルでひきつけるランキング記事。
では、すべてをランキング記事にすればいいかというと、そう簡単な話ではありません。なぜなら〝使える情報〟の賞味期限は短いから。
例えば、お昼のランチ情報は、ランチを食べる前は貴重ですが、食べた後は用済み、消費されて終わりです。接点を作れたのに、生かせないまま終わってしまう。情報発信の仕方としては、非常にもったいない結末と言えます。

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では、顧客にブランドを認知してもらったあとのコミュニケーションを継続的なものに発展させるにはどうすればいいか。ここで大事になるのが、「ブランドジャーナリズム」の視点です。

ブランドジャーナリズムという言葉は、2004年、マクドナルドCMOのラリー・ライト氏が、企業が従来の広告施策だけでなく自ら発信することを提唱する中で広まりました。現在では、宣伝やPRなど企業が情報発信する場面で、ジャーナリスティックな手法を活用する施策を指し、新たなマーケティング手法として注目を集めはじめています。
このブランドジャーナリズムを意識することで、企業が発信する情報を、継続的な関係づくりに生かすことができます。

その事例の一つが、求人検索エンジンサービスを手がけるIndeed(インディード)が手がけた「職場の〝謎ルール〟ブック」です。これは、Indeedが日本全国の働く人々から広く収集した、約5,200件にのぼる「職場でジェンダーギャップを感じた実体験の声」を元に制作したもので、特設サイトにて公開されています。
「職場の〝謎ルール〟ブック」には、女性の社会進出を阻む事例を「謎ルール」という形でまとめています。取り上げられているのは、例えば下記のようなケースです。

  • 車の運転は男性の仕事
  • 送別会で花束を渡すのは女性
  • 管理職は男性が向いている
  • 既婚女性は仕事を続ける必要がない

どれも今の時代には受け入れられないものですが、すべて最近の実体験を元に作られているそうです。(参考:『ジェンダーギャップを生み出す 守らなくていい職場の“謎ルール”ブック』を3月30日より無料公開! | PR TIMES)

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仮に同じようなことをしたら……従業員の心が離れてしまうだけでなく、社会から厳しい視線にさらされます。ツイッターなどSNS上でボイコット運動が起きてしまうかもしれません。そういう意味で、これらは、人事労務担当者にとってすぐに使える情報だと言えます。

一方で、ランチのおすすめ情報のように、消費されて終わるものかというと、そうではありません。ジェンダーギャップというテーマは、ランチのような個人レベルでおさまるものではなく、様々な人や組織が関係する社会性を伴っているからです。

このような情報を発信しているのが、求人検索エンジンの会社であるIndeedであることも重要です。Indeedが職場のジェンダーギャップについて発信することは違和感が無く、説得力が生まれます。その結果、Indeedの本業である求人検索エンジン事業の価値が上がります。

これは、ジャーナリズムの手法としては「コンストラクティブ・ジャーナリズム(建設的ジャーナリズム)」にあたります。世の中の課題を掘り起こし問題提起する従来のジャーナリズムと違い、その課題を解決するためにどんなアクションが必要なのかを示す、提案型の新しい報道スタイルです。
ジャーナリズムの役割が広がる中、期せずして企業側から新たな動きが生まれている。「職場の〝謎ルール〟ブック」は、そんなブランドジャーナリズムの可能性を感じさせる事例だと言えるでしょう。

企業の情報発信は大きな転換期を迎えています。膨大な情報がネット上にあふれる中、まず読者に届かなくてはいけない。同時に読まれるだけでは意味がなく、きちんとした関係を築いていく必要がある。

サムライトは、デジタルコンテンツマーケティングの領域で、これまで100社以上のオウンドメディアやSNSアカウントの支援をしてきました。同時に朝日新聞グループとして、新聞社で培った取材力、編集力を生かした施策も数多く手がけています。オウンドメディアによる効果的な発信、ブランドジャーナリズムを通した自社のブランドの浸透などにご興味のある方は、下記までお気軽にご連絡ください。

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奥山 晶二郎(おくやま・しょうじろう)

1977年生まれ。大学卒業後、朝日新聞入社。佐賀、山口、福岡と勤務し、2007年、デジタル部門へ異動。「asahi.com」の編集に携わり、「朝日新聞デジタル」立ち上げ、動画、データジャーナリズム、SNS連動企画などを担当。2014年から「withnews」の編集長を8年間務める中でパナソニックの「未来空想新聞」など多くの企業コラボ案件を手がける。2022年6月からサムライトに参画。