企業の認知拡大やイメージアップにつながるパーパスブランディング。その重要性を事例とともに解説します。
パーパスとパーパスブランディングとは
パーパスとは
パーパス(Purpose)を訳すと「目的、意図」などが一般的ですが、マーケティングでは「存在意義、目的、志」として使われます。つまり、パーパスとは「自社は何のために存在するのか」「社会課題にどのように貢献できるか」への答えとなります。また、掲げたパーパスと実際の行動が伴っているかどうかがとても重要です。理想だけで終わらないように注意が必要です。
パーパスブランディングとは(通常のブランディングとの違い)
パーパスブランディングとは、自社が掲げるパーパスを世間に認知してもらい、社内外のステークホルダーから多くの共感や信頼を獲得してブランディングにつなげる手法です。一方、これまでのブランディングの多くは、見込み顧客を絞り、顧客から得られる利益に焦点を当てた利益重視の手法となります。
パーパスが根付いている欧州企業。国内ではまだ先
ドキュメンタリストの高島太士さんは、欧州企業のパーパスに関して次のように述べています。「ヨーロッパの外資系企業にとって、サステイナビリティーは社会の中に当たり前に根付いているものです。SDGsの取り組みをすることに経済合理性があるとしっかり理解できています。しかし、日本の場合、それが理解できない会社が多いので、舵取りがうまくいってないのではないかと思います。」
日本企業でのパーパスの浸透はまだ先のようですが、世界の流れに取り残されないように注視する必要があるかもしれません。
引用:「広告朝日」 パーパスが求められる社会で、クリエーターがメディアと組む意味とは(2022/12/19)
カンヌライオンズでも注目された「パーパス」
2022年6月、カンヌライオンズ国際クリエイティビティフェスティバルがフランス・カンヌで開催されました。社会課題に向けて、パーパスに注目した広告の受賞が多かったようです。また、ウクライナのゼレンスキー大統領が映像で出演し、演説する場面もありました。国際情勢やパンデミックなど未来が不透明ですが、企業は短期的な利益追求の活動ではなく、環境や社会への配慮をした長期的な活動をすることが重要になってきています。
パーパスブランディングとは? マーケティングにおいての重要性を事例とともに解説
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パーパスブランディングが注目される背景
性能や価格で差別化が難しい時代 ~商品のコモディティ化~
マーケティング環境が激変し、どのカテゴリーでも「コモディティ化」が起きており、サービス産業やB to Bでも目立ってきました。コモディティ化が進むと、価格競争に陥りやすく、機能、品質、ブランド力など特徴が薄れて差別化が困難になります。そこで、企業の社会的責任や姿勢を示すパーパスブランディングが注目され始めました。ここでは近年、特に注目が集まっているSDGsやESGへの企業の取り組みとパーパスとの関係について整理します。
生活者の社会課題への関心の高まり
ビデオリサーチの調査データ「J-READ Basic(※)」によると、2021年は満15歳~74歳男女の21.4%が「SDGsに関心がある」と回答しています。2020年は11.8%でしたので、年々SDGsに代表される社会課題への関心の高まりがあり、企業は自社の社会的価値や、ブランドがどのような課題を解決するのかを問われています。
※全国47都道府県の主要新聞における閲読状況や生活者の生活行動、消費実態を捉えたデータサービス
ESG投資などにおける企業の社会的責任への注目
ESG投資とは、環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)に配慮している企業を評価して投資することです。近年の投資家は企業の業績や財務情報だけで投資判断せず、ESGへの取り組みも考慮して投資先を判断するようになってきています。自社の取り組みを明確に伝えることで、ステークホルダーとの関係性を強化することが期待できます。
参考: 長期的な社会価値の追求が企業のブランド価値を高め、短期的な成果も生む|広告朝日
パーパスブランディングの効果
顧客やステークホルダーの共感や信頼を得ることができる
実現したい社会像など、社会と共有できるパーパスを策定して取り組む企業は、世間から共感・信頼されます。このことは、顧客や株主など企業のステークホルダーのパーパスへの共感、支持につながり、そのようなステークホルダーが増えるほど、ブランディング効果も高まり、企業にとって様々なメリットが期待できます。
従業員のモチベーションを高めることができる
企業にとって、自社の理念や自社がどんなブランドでありたいかを広く社外に発信することともに、そうした考えを従業員やステークホルダーに向けて浸透させるインナーブランディングも重要な経営課題となっています。パーパスを取り入れたインナーブランディングで、従業員のモチベーションを高めた取り組みを紹介します。
・東横INN
国内外に338ホテル(2022年12月時点)を展開するビジネスホテルチェーンの東横INNは、新型コロナ感染前まではビジネスユースのリピーターやインバウンドの利用が多かったものの、感染拡大でビジネスユースが激減し、インバウンドの需要は消失、稼働率も低迷しました。この状況を抜け出すため、持続可能なブランドに変わる必要があると考え、リブランディングに取り組みます。各種宿泊施設の利用者が重視する点などを徹底的に調査し、ブランドロゴを刷新しました。ブランドコンセプトやカスタマープロミスをもとに、新たなサービスや設備を順次導入していくため、その宣言として2022年7月4日の朝日新聞朝刊にステークホルダーに向けた広告を掲載しました。
マッチング率の高い人材を採用できる
企業が掲げるパーパスに共感・信頼した求職者が集まることで、マッチング率の高い人材を採用できる可能性が高まります。また、社員の意欲向上や企業の成長のきっかけにもつながり、あらゆるメリットが生まれます。パーパスへの共感を軸にした採用を行うことで、共通した価値観を持った多様な人材をより受け入れやすくなります。
SNS活用で企業ブランディングが強固になる
企業のパーパスに共感・信頼した顧客が、自身のSNSで思いを発信するという流れも見受けられるようになってきました。顧客がSNSで情報発信する過程で、企業ブランドはより強固になることでしょう。また、その投稿が広く拡散すれば、話題性・認知度が飛躍的に上がります。しかし、SNSには炎上リスクもありますので、企業はパーパスに基づいた行動を行い、共感・信頼を失わないように注意しなければなりません。
パーパスブランディングを行う上での注意点
宣言と企業の実態がずれていてはいけない
宣言を掲げたものの何の活動も行わない、もしくは利益優先になっている場合、顧客や従業員から不信感を抱かれ、ステークホルダーから見放されてしまう恐れがあります。企業活動の実態がパーパスとずれているとパーパスウォッシュ(掲げたパーパスと企業活動の実態が伴っていない)につながってしまう可能性があり、ステークホルダーが離れてしまい企業運営に影響が出ることもあります。
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新聞広告でパーパスブランディングを行う理由
パーパスを訴えるメディアとして重要な信頼性
日本新聞協会広告委員会が発表した2021年「新聞オーディエンス調査(※)」によると、新聞の正確さと信頼性は全メディア中トップでした。新聞の情報に接触している人の特徴として、「環境に配慮した商品を選ぶ」(51.2%)、「企業の社会的責任に関心がある」(32.2%)といった傾向があり、企業・団体の経営姿勢や社会貢献活動に高い関心を持っているという結果となったようです。
※「新聞オーディエンス」は、新聞本紙の購読者を含め、何らかの方法で新聞の情報に接触する人と定義されています
※図: 新聞オーディエンス調査|日本新聞協会
参考: 新聞オーディエンス調査|日本新聞協会
新聞読者の社会課題に対する意識の高さ
新聞各紙が参加するJ-MONITOR(※)で、2021年10月と22年1月に「SDGs、個人や企業の社会的な課題への取り組み」を紹介する新聞広告を読者がどう読んでいるのか、調査を実施しました。新聞読者が取り組んでいることとして「省エネやリサイクルなど、環境保護のために心がけていることがある」が全体で54.6%とトップでした。また、「マイノリティ(LGBT といった性的マイノリティなど)の問題に強い関心がある」は全体で15.6%でしたが、29 歳以下の男性で 22.1%、女性が 32.8%と、スコアが高い傾向に。総じて、新聞読者は SDGs への理解が深く、社会課題へのリテラシーが高いことがうかがえます。これらの回答結果から、パーパスブランディングと新聞は親和性が高いと考えられます。
※新聞広告新聞社共通の調査プラットフォーム
※図: 新聞読者は SDGs、社会課題への取り組みを紹介する広告をどう読んでいるのか|J-MONITOR 調査 【調査実施機関】ビデオリサーチ 【調査日】2022 年 1 月
参考: 新聞読者は SDGs、社会課題への取り組みを紹介する広告をどう読んでいるのか|J-MONITOR 調査 【調査実施機関】ビデオリサーチ 【調査日】2022 年 1 月
新聞社は編集力やノウハウ、広告事例が豊富
朝日新聞社には、日々発生する大量の情報を即座にわかりやすく読者に伝えるための編集力や、見やすくて読みやすい紙面・ウェブメディア制作のノウハウがあります。また、記事コンテンツ同様に広告事例も長年にわたって豊富に蓄積しています。
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新聞広告におけるパーパスブランディングの事例
サントリー 「人生には、飲食店がいる。」
2021年度第70回朝日広告賞「広告主参加の部」グランプリは、サントリーホールディングスの広告でした。新型コロナウイルスによる緊急事態宣言や、まん延防止重点措置が実施される中、2021年11月3日に「人生には、飲食店がいる。」というメッセージを掲げ、営業時間の短縮や酒類の提供の自粛を余儀なくされる飲食店を応援するキャンペーンを展開しました。
参考: 2021年度 第70回 朝日広告賞「広告主参加の部」受賞社インタビュー|朝日広告賞
大王製紙 「アテント」
2020年8月、発売40周年となる大王製紙の大人用紙オムツ「アテント」は、草彅(くさなぎ)剛さんを起用した新聞広告や日本テレビの「24時間テレビ43『愛は地球を救う』」でテレビCMを放映するなどの大規模なキャンペーンを展開しました。介護や紙オムツを自分ごとととらえ、誰もがオープンに話せる社会にしたいというメッセージは、幅広い層から大きな共感を集めました。
参考: 介護やオムツのことを自分ごと化し、オープンに話せる社会を目指す。|広告朝日
朝日新聞でのパーパスブランディングの事例
ジャーナリズムと編集力
朝日新聞の広告コンテンツ制作で共に組むことが多いドキュメンタリストの高島太士さんは、メディアと一緒に仕事をする価値を「これまでの日本の広告は、表現のアウトプットを広告会社にお願いしていました。今は『商品の売り方』ではなく『あり方』の方が大事になって、メッセージを会社の中の人が考えるようになってきています。自分たちの考えをどう言語化するのか、つまりは編集能力。コピーもいいけれど、もう少しじわっと来るような考え方を伝えるのであれば編集の力が必要になります。その点では、広告会社よりメディアの方がたけている。また、社会とのつながりが必要な時代なので、ジャーナリズムを理解している会社が編集力を生かしてクライアントと寄り添うのが正しいはずです」
と語っています。
引用:「広告朝日」 パーパスが求められる社会で、クリエーターがメディアと組む意味とは(2022/12/19)
未来空想新聞
2022年5月5日の「こどもの日」。朝日新聞朝刊(東京・神奈川と関西2府4県)に「未来空想新聞」が折り込まれました。40を超える著名人・企業・団体が賛同し、「生き方」「家族」「ジェンダー」「AI」など、各ジャンルの「未来」をテーマにした広告の特集となっています。パナソニックは将来においても顧客のくらしに貢献し、共感してもらえるブランドであり続けるためにも、若い人たちのくらしや社会の変化にもしっかりと向き合い、価値観に寄り添えることが重要と考えて、「こどもの日は未来を考える日」というコンセプトのもと、未来を考える新聞をつくりました。
参考: よりよい未来をともにつくろう!|広告朝日
芝浦工業大学
2022年3月8日、ジェンダー平等を尊重する国際女性デーに関連した記事や広告が朝日新聞に掲載されました。その中でも「男は理系。女は文系。」というキャッチコピーでインパクトを残し、SNSでも話題となった芝浦工業大学は、イノベーションは多様性の中から生まれるという考えのもと、2013年10月に男女共同参画推進室を設置し、女性教員の積極的な採用や、女子小中高生に向けた各種イベントの開催など、理工系女性を育成するさまざまな活動を推進してきました。今回の新聞広告は、そうした同校の姿勢と実践について広くメッセージしたものです。
参考: 国際女性デーに合わせてメッセージを発信|広告朝日
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