歴史を積み重ねた朝日新聞社の展覧会 文化を支えつつマーケティング活動に貢献する「協賛」という打ち手

 朝日新聞社は美術から博物、寺社仏閣、科学、絵本、キャラクターなど幅広いジャンルで展覧会を企画・主催しています。開催件数は年間およそ50タイトルで、年間数百万人を動員しています。そんな展覧会には「協賛」という形で、様々な企業・団体にもご参加いただいています。展覧会協賛の意義やメリット、実際について、メディア事業本部文化事業1部の片岡壮太次長に聞きました。
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文化事業に100年以上の歴史

──朝日新聞社の展覧会にはどのようなものがありますか

 弊社が取り組んできた文化事業には100年以上の歴史があり、1964年にはフランスから「ミロのビーナス」の初の海外公開を実現し、172万人を集客しました。現在も年間45本の大型展を軸に、多彩で質の高い展覧会を主催しています。

 2023年は東京都美術館で開催した「マティス展」で約45万人、東京と大阪で開催した特別展「恐竜博2023」では合わせて約57万人を動員しました。ドラえもん展やエヴァンゲリオン展など、海外進出の事例も昨年は飛躍的に増えました。

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──朝日新聞社がこうした展覧会を開く意義はどこにあるのでしょうか

 展覧会で私たちがやることは「みんなが知らないこと、初めて見るものを紹介する」あるいは「体系的に知りたいこと、海外に行かないと見られないものを、まとめて見せる」ということです。これは、「みんなが知りたいことを見つけて、まとめて伝える」マスメディアの姿そのものです。マスメディアのDNAを持った我々だからこそ、展覧会は得意な事業と言えます。

 その上で、朝日新聞社には長い歴史や人脈、信頼と実績があることから、様々な展覧会の企画・主催が可能なのだと思っています。

──展覧会では協賛の形で企業・団体にも参加していただいています

 展覧会もビジネスではありますが、「人々の文化的生活を豊かにしたい」という理念に共鳴されて、その思いを協賛という形で表現していただいています。

──協賛といえば「協賛:○○」のように企業名が出ることがまず思い浮かぶメリットですが、ほかにどんなことがありますか

 ご協賛社のために、平日夜などの閉館後を中心に会場を貸し切る「特別内覧会」をセットすることもできます。展覧会によっては列に並ばないと入場できない、入場しても混雑している……といったことがありますが、クローズドな内覧会では顧客や取引先などの関係者を招いてゆったりと鑑賞していただけます。大切なお客さまに特別な体験を提供することで、ブランド戦略や顧客戦略などのマーケティング活動に活用できます。また、従業員の福利厚生としてインナーコミュニケーションにも活かせます。

片岡さんキャプチャー改1 片岡壮太・文化事業1部次長

協賛の力で、展覧会をより良いものに

──ほかに、協賛に関する事例を教えていただけますか

 展覧会にちなんだオリジナルグッズを制作・販売するケースもあります。

 国立科学博物館(科博)で20242月まで開催し、現在全国巡回中の「和食展」では、ご協賛いただいた三和酒類様の特別仕様パッケージの焼酎を特設ショップで取り扱いました。また、同じくご協賛いただいたキッコーマン様の商品では、直営の通信販売でしか取り扱わない特別な醬油を販売しました。科博のような公共施設での催事でも、特設ショップは協賛社のアピールを比較的していただきやすい空間です。今回はいずれも、展覧会内で扱った「発酵文化」という文脈も活かすことができました。

 ちなみにキッコーマン様からは醬油の実物、三和酒類様からは発酵したもろみなどの資料写真を提供していただき、和食展の展示で活用しています。

 このように、展覧会によってはグッズ展開などが可能なケースもありますが、多くの展覧会で会場としている国公立の美術館・博物館ではできることに限りがある場合が多く、その条件について都度確認をしながら調整をしています。

──さまざまな方々に支えられながら展覧会を開催しているのですね

 来場されるお客さま、そしてご協賛社の期待に応えるべく、我々も新しい切り口の企画を考えています。

 「草間彌生 わが永遠の魂」展(2017年、国立新美術館)では、中学生までの子どもとその親のための「キッズデー」を設け、ご協賛社にイベントを支えていただきました。小さな子ども連れの保護者の方に美術展を気兼ねなく楽しんでもらいたくて、子どもが泣き声を上げてもOKな日を作ろうと企画しました。実際に反響は上々でした。私も子どもを連れて行きまして、自分の子が立体作品によじ登ろうと駆けだしたときにはヒヤヒヤしましたけれども(笑)。コロナ禍明けの昨年も「古代メキシコ展」でキッズデーを実施しました。今後も開催事例を増やして、教育や食品といった分野の企業に向けたスポンサーメリットを創出していきたいです。

 文化事業や展覧会への協賛となると、ハードルが高いとお感じになる方もいらっしゃると思います。しかし、展覧会は来場者収入や物販だけでなく、ご協賛社の下支えを得ればより内容や広報を充実させることができます。そうすると話題性や動員数が伸び、ご協賛社に対してもより良い還元をすることができます。これまで関わったことがない方々にもぜひ文化事業のファンになっていただきたいですし、気になる展覧会やジャンルがございましたら、お気軽にお問い合わせいただければ幸いです。

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