国内唯一の日刊ブランケット判・子ども新聞
――朝日小学生新聞について教えてください。
朝日小学生新聞は、朝日学生新聞社が発行している小学生向けの新聞です。全国にはいろいろな子ども向けの新聞が存在しますが、大人の新聞と同じブランケット判のサイズで、かつ日刊の子ども新聞は、国内で朝日小学生新聞だけになります。夢や目標を追いかける子どもたちの力になる、「子どもの未来を応援する」がコンセプトの媒体です。
――どのような方が読者で、どんな読まれ方をしているのでしょうか。
教育熱心で、中学受験を意識したご家庭からの購読が一定の割合を占めています。また、中学受験は視野に入れていなくても、親子で一緒に取り組めることを探している、アクティブなファミリー層から支持を得ていると感じています。
想定している読者ターゲットは小学生で、《4年生が一人で読める難易度》を目指して紙面を作っています。しかし、新聞を読んでいた兄姉に憧れて、未就学の頃から手に取ってくれているお子さんや、弟や妹が読んでいるからと中高生になっても親しんでくれる読者もいます。8割以上の保護者が子どもと併読しているというデータもあり、「大人が読んでも面白い」という声もいただいております。
多様化が進む社会の色々な一面を知ってほしい
――どのような記事が載っているのでしょうか。
多様化が進む社会で、子どもたちがどんな出来事に興味を持つかわからない。そのため、できるだけ偏りなく幅広いジャンルの話題を掲載するよう意識をしています。中学受験に役立つ情報やアドバイスはもちろんのこと、普段の学校生活で使える知識、友達の間で盛り上がっている話題などはしっかりおさえておきたいと思っています。
――紙面作りの特徴や、こだわりはありますか。
やはり、他の子ども新聞にはない紙面の大きさを使った企画が朝小ならではですね。月に一度は、見開き全面を使ったダイナミックな記事を掲載しています。新聞に初めて触れるお子さんたちは、まんがから読むことが多いので、4コマまんがや連載まんがは目につきやすいように。また、紙面はオールカラーで、写真やビジュアルでパッと興味を引くように工夫しています。
ビジュアルを充実させた一方で、近年、全体の文字数は減らしています。読者アンケートの結果、「新聞を読める時間が5分〜10分しかない」という声をいただいたことがきっかけです。よりコンパクトで分かりやすい紙面作りへと、2020年4月に全体のレイアウトや文字のフォントを変更し、時代に合わせて改革を行った経緯があります。
――子どもたちに記事を読んでもらうための工夫が必要なのですね。
文章を読む力や、人に物事を説明する力は、一朝一夕で身につくものではありません。ですから、子どもたちが毎日活字に触れ、興味がある話題を見つけてもらうためにはどうしたらいいのかを常々考えています。
2024年8月には、「フウキ編集長からの挑戦状」というチャレンジ企画を打ち出しました。毎日、紙面のどこかに色がついた文字が散りばめられていて、それを集めて問題を解いてみようというものです。この企画には読者から900件を超える応募があり、その反響には驚きました。親子で印をつけて文字を探したり、問題を解いたりと、毎日隅々まで楽しんでいただけたと感じています。
業界の垣根を越えたコラボレーションが実現できる理由
――特に力を入れているテーマやコンテンツはありますか。
朝日小学生新聞が他紙と大きく違う点は、やはり読者参加型の紙面づくりです。身近な出来事をリポートしたり、大人の記者と一緒に取材に行ったりする「朝小リポーター」には、全国で500名ほど登録していただいており、みなさん積極的に活動してくれています。子ども視点の記事ができるのは、朝小リポーターたちが活躍してくれているおかげです。
私個人としては、世の中にもっと理科好きな子が増えてほしいという思いがあって、今年度から「おどろきサイエンス」という連載をスタートさせました。JAXA(宇宙航空研究開発機構)、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)、JAMSTEC(海洋研究開発機構)、国立極地研究所に月に一回、最先端研究を紹介していただいています。他に、学校でも世間でも関心があるSDGsや防災についての学びは、特に力を入れている分野です。
――子どもたちを惹きつけるコラボレーション企画も多いですよね。
人気ゲーム「桃太郎電鉄」シリーズ(コナミデジタルエンタテインメント)とコラボした記事は好評です。学校へ教材として配布したポスター企画も喜ばれましたし、リアルで行った体験イベントも大成功でした。2024年10月には、朝日新聞本紙で人気のクイズコーナー「もっと教えて!ドラえもん」が小学生新聞の紙面に転載されますし、KADOKAWAさんの協力で人気キャラクター「ちいかわ」の連載もスタート予定です。
このようなキャラクターや作品は、非常に強力で魅力的なコンテンツである一方、さまざまな制約があって使用のハードル高いものなのですが、「朝日小学生新聞ならぜひ」と好意的に検討していただけるケースが多くありがたいですね。媒体の認知度の高さと長年積み上げてきた信頼感、そして何よりも熱心な読者に読まれているという点で、新しいコラボ企画にも賛同してくれている企業が多いです。
子どもの興味を起点とした これまでにない新たなコンテンツ作りを
――編集長として、どのようなことを意識していますか。
新聞は情報を伝える媒体です。しかし、朝日小学生新聞はニュースそのものを伝えるだけではなく、「そのニュースが学びにどう役立つか」、そして「そのニュースで将来をどう考えるか」までを考えて記事を作っています。記者たちには、子どもたちの一生ものの知識になって、生活に役立つという視点でニュースを書くことを意識してほしいと伝えています。私自身は、常に子どもたちの興味の入り口を探してアンテナを張っています。
――今後の展望はありますか?
朝日学生新聞社は、中高生向けの「朝日中高生新聞」も刊行しており、こちらは来年で50周年を迎えます。かつては社内に出版部門もあり、書籍も刊行していたのですが、現在はありません。我々としては、新聞に掲載している小説や漫画も、いいものをたくさん作っていると自負していますので、朝日小学生新聞・朝日中高生新聞のニュース以外のコンテンツももっと世の中に広めていけたらと考えています。
あとは、今後もこれまで以上に、他社と一緒に新しいコンテンツを作っていけたら。読者に喜んでもらえる、びっくりするような楽しい企画は引き続き考えていきたいので、世間で話題になっているもの、子どもたちに人気があるものを見つけて、積極的にお声掛けさせていただこうと思っています。
2005年朝日学生新聞社入社。記者として宇宙や科学関連の取材を多く手がける。2020年9月から「朝日小学生新聞」「朝日中高生新聞」編集長。