新聞社だからできる、信頼性の高いペット専門情報サイト
──sippoはどのようなメディアですか?
sippoは2007年9月に創刊した、犬や猫と暮らす飼い主向けのペット専門メディアです。テーマは「犬や猫ともっと幸せに」。創刊当初はタブロイド判で、朝日新聞朝刊に折り込んで届けていましたが、2015年7月からはウェブサイトで情報発信を行っています。
特徴は、人とペットが共生できる社会を目指し、社会性・信頼性の高い情報を発信していることです。犬や猫はとても身近でかわいい存在ですが、その一方で犬猫の殺処分や多頭飼育崩壊など、社会課題もあります。それらは1つの団体や個人だけでは解決できない複雑な課題です。新聞社が運営するメディアとして、犬や猫、そして人間社会を取り巻く社会課題としっかり向き合い、その解決に向けて、動物保護団体や獣医師、専門家、そしてテーマに賛同してくださる企業の方とも連携しながら活動をしています。
──他のペット関連メディアと比べて、sippoの強みは?
新聞社として社会課題に向き合い、そのプレイヤーでもあり、かつ、確かな取材に基づいた信頼性の高い情報を発信しているメディアは他にはないと思っています。
読者層は、女性が6割で、30代から50代が中心です。猫を飼っている方が約48%、犬を飼っている方が約26%。犬と猫が約12%という割合です。メルマガ会員は1万人ほどで、近年はLINEの公式アカウントも開設しました。メルマガとLINEともに、毎週1回sippoの最新情報などを配信しています。
──具体的には、どのような活動をされているのでしょうか。
コンテンツの柱は、大きく2つあります。1つは、殺処分や多頭飼育崩壊、保護犬・保護猫など、犬や猫の社会課題と向き合い、その解決に向けた取り組みです。人に飼われている犬や猫の数は、今は15歳以下の子供の数よりも多いと言われています。人間にとって、とても身近な存在でありながら、今でも年間約1万2千匹もの殺処分が行われている状況です。多頭飼育崩壊は近年、特に露呈している課題の1つ。お世話を仕切れないほど犬や猫が繁殖してしまい、飼育環境がすさまじく低下してしまう。そんな中で暮らしている犬や猫が増加しているんです。
こうした状況をなくすためにも、まずは現状を知る必要があると思っています。目を背けたくなる課題ではありますが、私たちは動物保護団体を取材したり、多頭飼育崩壊の現場にも入って、現状を伝えたりしています。
もう1つは、犬や猫と暮らす上での正しい知識や情報の発信です。しつけや健康、医療、介護、ペットロスなど、飼い主が知っておくべき最新の情報を解説しています。例えば、犬や猫の飼育の考え方は、20、30年前とは大きく変わっています。かつては飼い猫であっても、外に放して半分野良猫のように暮らしていたり、犬は番犬として外に繋いでいたりする家庭が多かったと思います。しかし今は野良猫や野良犬を増やさないためにも、室内での飼育や、繁殖させないなら不妊去勢手術が推奨されています。犬や猫ともっと幸せに暮らすためにも、獣医師、ドッグトレーナーなど専門家の方々に取材を行い、正しい最新情報を伝えていく必要があると思っています。
よく読まれている記事は、犬や猫が病気になって亡くなるとき、飼い主は何ができるのかを解説するシリーズです。獣医師監修のもと、病気の症状や治療法はもちろん、どんな経過を経て亡くなる可能性があるのか。そのプロセスを伝えているのですが、とてもよく読まれています。病気になる前に、できることもたくさんあるので、それを伝えると同時に、困ったときに頼りになる存在でありたいと思っています。
──保護犬・保護猫の譲渡会などのイベントも開催されています。
2年前、動物保護団体に協力していただき、朝日新聞本社の会場で保護犬と保護猫の譲渡会を開催しました。また2016年から写真展も開催しています。保護犬や保護猫が家族に迎えられて幸せになった様子の写真を飼い主さんから提供いただいて、メッセージとともに展示をするという内容です。
sippoでは、保護犬や保護猫に限らず、いろんな家族の在り方があることを伝えられたらいいなと思っています。そのコンセプトをもとに、sippoのトップページで、飼い主さんからの投稿企画「sippoストーリー」も展開しています。
こうした様々な活動をしていたら、私たちの活動に関心を持ってくださる企業もでてきました。「犬や猫をもっと幸せに」というテーマをもとに企業と一緒に何ができるか探りながら取り組んでいます。また社会課題に向けたリアルイベントを一緒に行い、その内容を朝日新聞に広告特集として掲載することもあります。
sippoのネットワークを活用して、企業連携して譲渡会を開催
──企業と取り組んだ事例を教えてください。
代表的な事例の1つが、総合家電メーカーのパナソニック株式会社様との取り組みです。パナソニック様は、くらしを便利で豊かに、人や社会が幸せになることを目指し、2022年から毎年「パナソニック保護犬猫譲渡会」を開催しています。1年目の22年は東京で、2年目の23年は東京と大阪でそれぞれ開催されました。sippoはこの譲渡会に協力しています。2年目までにのべ1万3千人以上の方々が来場し、170頭以上の譲渡につながりました。
3年目となる今年4月には東京・有明で開催し、元保護犬猫の写真展やチャリティーマーケット、動物たちと暮らす毎日を快適にする体験コーナーなども設置し、のべ5,000人超の来場者で賑わいました。
来場者は保護犬たちを優しくなでながら、保護団体スタッフの説明を聞いていた
来場者は元保護犬や元保護猫たちが現在は幸せに暮らしている姿をゆっくり眺めていた
パナソニック様は、2021年から次亜塩素酸 空間除菌脱臭機「ジアイーノ」を動物保護団体に寄贈する活動にも取り組まれていて、これまでに全国で30の動物保護団体に寄贈、sippoはそのサポートを行っています。強力な脱臭機能が特長の「ジアイーノ」を寄贈することで、快適な譲渡活動の支援となり、保護団体の方々は、その効果にとても満足し、喜ばれています。
2024年1月27日には、旭化成ホームズ株式会社様とsippoが連携し「HEBEL HAUS保護犬猫譲渡会」を開催し、朝日新聞東京本社にある浜離宮朝日ホールでトークイベントも開催しました。旭化成ホームズ様の「HEBEL HAUS」は、動物も人も幸せな暮らしが長く続く、そんな「LONGLIFE」を目指しています。トークイベントでは、動物と幸せに暮らしていく未来の形をテーマに、旭化成ホームズの方が、犬猫の保護活動に注力する坂上忍さんと対談し、その模様は朝日新聞朝刊に広告特集として掲載しました。
2023年3月から、日用品メーカーのエステー株式会社様がスタートした「保護ネコ応援プロジェクト」もサポートしています。このプロジェクトの一環で、SNSのキャンペーンもこれまでに2回行いました。Xとインスタグラムで展開し、「#エステー保護ネコ応援プロジェクト」付きの投稿と、投稿へのいいねやリポストの数によって、「エステーの猫用トイレ用品」を保護猫団体に寄贈するという内容です。これまでのべ45の動物保護団体に寄贈しました。寄贈した団体をエステーの担当者様が訪問して保護活動の実態や商品の感想などをうかがう様子を記事にしてsippoでタイアップ記事として掲載したこともあります。
──いずれも企業の姿勢や思いが伝わってくる内容ですね。企業と連携して譲渡会を実施する効果を教えてください。
企業と連携し保護犬や保護猫の譲渡会をすると、参加しようか迷っていた方々が足を運んでくれる傾向があります。保護犬や保護猫に関心があったけど、どの譲渡会に参加していいか分からない、という方が多いと思います。パナソニック様や旭化成ホームズ様が、朝日新聞社のsippoと連携していたから安心して参加できました、と初めて譲渡会に来場してくれた方も多くいらっしゃいます。冒頭にもお話しましたが、犬や猫の課題はとても複雑であるからこそ、企業や団体、そして私たち一人ひとりが連携して取り組んでいくことが重要だと思っています。
──今後の展望について教えてください。
sippoでの情報発信はもちろん、企業と連携した取り組みにも力を入れていきたいと思っています。人だけでなく犬猫にも優しい、健やかな社会をつくりたいという各企業の思いがあり、私たちはそれを形にするお手伝いをしています。私たちは動物保護団体や獣医師などの専門家の方々とのつながりがたくさんあるので、もし関心を持っている企業の方がいれば、お気軽にご連絡をいただきたいです。SNSをはじめ、新聞やウェブ、イベントなど、いろいろな方法があるので、一緒により良い方法を考えていきます。
sippo編集長。2005年朝日新聞社入社。静岡、岐阜、函館で新聞記者。事件事故や自治体取材、選挙取材などを担当。編集センター(当時)を経て、2018年からsippo編集部。保護団体、獣医師などと連携しながら、飼い主向けの情報や犬猫をめぐる社会問題などを取材。