ドラマ放送に合わせてPR
テレビ欄を彩った原作コミック『大奥』

 2023年1月10日よりNHK総合にてドラマ『大奥』がスタートしました。放送開始日の朝日新聞朝刊のテレビ欄を彩ったのが、原作である白泉社『大奥』の広告です。漫画作品によるテレビ面の活用は、これまであまりなかった事例。このユニークな企画がどのように生まれたのか、白泉社 宣伝部 宣伝課の山下葵氏に、出稿の背景やクリエーティブのこだわりについてうかがいました。

ドラマ化を原作コミック再注目の契機に

 『大奥』は男女の役割が逆転した江戸時代という大胆な設定で話題を集めた、よしながふみ氏による漫画作品だ。2021年にコミックス19巻で完結したものの、まだまだ熱が冷めやらぬなかでの今回のドラマ化。『大奥』愛が再燃したというファンも多いことだろう。その盛り上がりに一役買ったのが、2023年1月10日付朝日新聞朝刊のテレビ面を活用した、白泉社『大奥』の新聞広告だ。出稿の理由について、白泉社 宣伝部 宣伝課の山下葵氏は次のように語る。

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山下氏

 「『大奥』は末永く多くの人たちに愛していただける素晴らしい作品。今回はドラマ化というタイミングを、いろいろな人に改めて知ってもらえる機会にしたいと出稿を決めました。ドラマをきっかけに新しい読者になってほしいという思いもありましたし、すでに読んでいる方々には、ドラマを見てまたさらに『大奥』を好きになってもらいたいと考えました」
 2021年のコミックス最終巻の発売日には、朝日新聞朝刊全30段を活用し、「完結」を大々的にPRした『大奥』だが、今回活用したのはテレビ面だった。テレビ面は新聞を開くと最初に目にすることもあって、話題化しやすい広告スペースだが、出版社が出稿した事例はあまり多くない。しかし山下氏は「珍しいからこそ目立つだろうと考えました」とその意図を話す。
 「前回、完結巻の企画でとても大きな反響があり、『大奥』という作品と新聞広告の相性の良さを実感していたので、今回もぜひ新聞でと考えました。テレビ面を選択したのは、ドラマ化という話題を最大限に生かすには、ここがベストだろうと。白泉社でもあまり出稿事例のない掲載面でしたが、だからこそ効果的だろうと判断しました」

完結巻に関する記事はこちら

テレビ面を生かすために「対比と調和」を意識

 今回活用したのはテレビ面の右上と左下の「表札」と呼ばれるスペース、そしてテレビ欄左端すぐ横の細長い「テレヨコ」というスペースだ。『大奥』の定番キャッチコピー「将軍は女、ひれ伏すは美男三千人」を右上と左下に分け、ドラマで描かれる徳川吉宗と水野祐之進のイラストとともに配置した。テレヨコでは、「よしながふみの傑作『大奥』。非情な運命に翻弄されながらも、もがき生き抜く人々の愛と生き様を描く。試し読みは下の二次元コードから。」と、作品の魅力と必要な情報を文字のみで簡潔に伝えた。

2301_ookucp_ad 2023年1月10日付 朝刊714KB

 「右上と左下に出稿するので、クリエーティブでは対比と調和を意識しました。女と男という対比のほか、書影も1巻と最終巻である19巻を載せることで対比させています。ただ対比させながらも一つのクリエーティブとしてまとまりを持たせたかったので、背景は同じデザインに。試し読みのための二次元コードの位置など、レイアウトはほぼ同じです」

SNSで大きな話題に

 掲載当日の紙面では、小さな文字が多いテレビ面のなか『大奥』のイラストが非常に目立ち、まるでテレビ面を『大奥』がジャックしたようなインパクトある紙面になった。
 「出稿した自分でさえ開いたときのインパクトに驚いたほど。やっぱりこのサイズ感こそ、他のメディアにはない新聞の魅力だと再認識しました。社内の評判も良く、『とても印象的だった』と声をかけられることもあり、多くの人に見ていただけたという実感があります。漫画『大奥』についてたくさんの方に知っていただけたのではないでしょうか」

 山下氏の願いが叶い、『大奥』関連のワードが複数トレンド入り。SNSは『大奥』の話題で大いに盛り上がった。新聞の読者からは、色使いがよい、インパクトがあるといったクリエーティブを賞賛する声や、原作も読んでみたいという意向が寄せられた(J-MONITOR調査より)。
 最後に今回の企画を通して改めて感じた新聞広告への魅力について、山下氏に聞いた。

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 「ウェブやSNSの広告展開ももちろん重要で、今回も『試し読み』に誘導するバナーなどは置いています。しかしスマホの画面の中だとどうしてもサイズは小さくなってしまうもの。その点、新聞広告はとにかく大きい。あのインパクトというのは新聞広告でしか出せない魅力だと改めて感じました。とくに『大奥』は少女漫画であると同時に時代劇でもあるので、新聞の読者層とも相性が良いように思います。こうした相性が良いときの新聞広告のシナジー効果はとても大きいと考えているので、出版社としては、どうすれば新聞広告の特徴を生かしつつ、作品の魅力を最大限に伝えられるのかを見極めながら、今後もここぞというタイミングで活用していければと思っています」

 ドラマを見て『大奥』に興味を持った方も、そしてドラマをきっかけに改めて読み直したいと思った方も、この機会に原作コミックを読み、漫画とドラマの両方から『大奥』を味わってみてはいかがだろうか。