広告朝日30号「アフターコロナ ―広告コミュニケーションのこれから」のCOVER PICK-UP ARTは、アーティスト 大小島真木氏の「Entanglement hearts」です。
人や動物、植物、自然など、様々な生命が絡まり合うように描かれている。細部まで描き込まれていて、1つひとつのモチーフはリアリティーがある。だけど、儚はかなげで幻想的。その違和感に目が奪われる。この作品を手がけたのは、画家の大小島真木さん。タイトルは、Entanglement hearts(エンタングルメントハート)。絡まり合う心臓という意味だ。
このシリーズに描かれているのは、自分たちは独立して生きているのではないという現実だ。自然界ではあらゆる生き物が、食べて、食べられながら循環している。人間目線だとネガティブに思えることも、実はそうではない。小さな菌の存在も、生命の進化の過程には欠かせないものであり、生き物は菌がなければ消化もできない。
「そんな生命や生き物が絡まり合う様を起点に、生命の象徴である心臓を象(かたど)って描いたシリーズがEntanglement hearts。新型コロナの流行で緊急事態宣言が発出されていた2020年4月後半から、毎日描いていました」
リアルなストーリーが背景にある作品も少なくない。インドにおいて病んだ牛を労働させるために投与されていた抗炎症薬が、牛の死骸を餌としていたハゲワシを絶滅させた結果、牛の死骸が大量に放置されることになった。すると炭疽菌が発生し、ハゲワシに代わり牛の死骸を餌とするようになった野犬が増加して狂犬病の脅威が人間にもたらされるようになった、という話をとある講演で聞いた。それは、新型コロナウイルスをテーマとするトークで人類学者が語っていたことだ。そこで気づきを得たことを、大小島さんは記憶にとどめておくためにドローイングするのだという。
「話を聞いて描くのは、コラージュに近い。具象化したものを縫い合わせていくようなイメージです。そうすることで、私自身も何度も反芻(はんすう)することができ、人にもシェアできますよね。知っていることを描くというよりは、クリエーションしながら思考しているんです」
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クリエーターインタビュー
絡まり合いながら循環する生命の複雑さ、見る人の思考を促すアート作品 アーティスト 大小島真木氏