変わらない魅力をクリエーティブでより広く伝える「図書カードNEXT」企画広告シリーズ

 2021年12月、2022年3月に掲載された「図書カードNEXT」の新聞広告が「心が温かくなる」と話題です。出稿の経緯やクリエーティブのこだわりについて、「図書カードNEXT」の運営・管理を行う日本図書普及株式会社営業部宣伝広報課長の京谷雅也氏、クリエーティブ・ディレクターの橋口幸生氏、コピーライターの長谷川輝波氏、アートディレクターの堀籠正樹氏にお話を伺いました。

「図書カードNEXT」の魅力を新しい形で伝える

 誕生日や記念日に、そしてクリスマスや入学式などの季節のイベントに、主に大人から子どもに贈られるギフト商品として人気を集めている「図書カードNEXT」。贈り物として不動の人気を誇る図書カードの魅力について、同商品の運営・管理を行う日本図書普及㈱の京谷氏は次のように語る。
 「図書カードは、クリスマスと、入学祝いなどで利用される春先が購入の盛り上がりを迎える二大シーズン。この時期になると“もらってうれしかった”という子どもたちの声をあちこちで聞くことができます。どこが喜ばれているかというと、やはり“自分で本を選べる”という点でしょう」(京谷氏)
 京谷氏が話すように、これまでも同社は贈り物需要が増すこの2つのタイミングにあわせ新聞広告を出稿してきた。これまではストレートに商品を見せる広告が中心だったものの、今シーズンは2021年12月12日掲載の「さよなら、サンタさん。」、2022年3月20日掲載の「#1万円のエール」と、朝日新聞社とタッグを組みオリジナリティの強いクリエーティブでのメッセージ訴求に取り組んでいる。この新たな取り組みについて京谷氏は、「提案いただいた内容が心をつかまれる内容だったので」と話す。

思わず惹き込まれた「さよなら、サンタさん。」のコピー

 クリスマス時期に掲載された「さよなら、サンタさん。」は、クリーンで美しい背景に、どこか寂し気な人形と、手書きの文字が印象的なクリエーティブ。「さよなら、サンタさん。」というドキッとするキャッチコピーに続く、親の子どもに対する愛情がにじむリードコピーは、多くの読者の心をつかんだ。企画とコピーライティングを担当した橋口氏は発想の原点を次のように話す。

20211212_toshocardnext_ad 2021年12月12日付朝刊 15段カラー516KB

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橋口氏

 「まずどんなシーンで図書カードを送りたいか、を考えていきました。小さな子ども達のプレゼントは、サンタさんがおもちゃを持ってきますよね。それならばもう少し子どもが大きく、自分で物を買いたがる年代の子どもを持つご両親にアプローチするのがいいかなと考えていきました。私自身、ちょうど“さよなら、サンタさん。”世代の子を持つ親。自分にあてはめながら、子どもが自分で本を選ぶ体験も素敵だろうと想像し、その思いを文章にしていったところ、自然とコピーが出来上がりました」(橋口氏)

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堀籠氏

 デザインを担当したのはアートディレクターの堀籠氏だ。
 「人形を出すなど、最初に方向性をチームで決めていたのでデザイナーとしてはそれを詰めていったカタチです。人形は私が百貨店に足を運んで選び、松ぼっくりは家の近所の神社で拾ったもの。手書きの文字は小学校2年生のうちの子が書きました(笑)。手作り感が全体の温かみにつながったのではと思っています」(堀籠氏)
 最終的に完成した広告原稿を見た京谷氏は胸をなでおろしたという。
 「“さよなら、サンタさん。”というコピーが読者の方に驚かれないかと少し心配していたのですが、下のリードコピーで、子どもの成長を見守る親心がしっかりと書かれていたので、全体的に優しさが漂ういい広告に仕上がっていました。やはり15段という大きなスペースは広告の持つ空気感を伝えるのにぴったりの場ですね。掲載後、Twitterでもキャッチコピーとリードとのギャップに“ほっこりした”、“安心した”という声をいくつか見ることができました」(京谷氏)

子どもを応援したい親の気持ちに寄り添う「#1万円のエール」企画

 「さよなら、サンタさん。」に続き、同チームが手掛けたのが2022年3月20日掲載の「#1万円のエール」企画だ。紙面の本棚に並んでいる合計1万円分の本のタイトルを順番に読んでいくと、親から子へと贈るメッセージになっているという仕掛けに驚いた人も多いだろう。企画とキャッチコピーを担当したのはコピーライターの長谷川氏だ。

20220320_toshocardnext_ad 2022年3月20日付朝刊 15段カラー471KB

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長谷川氏

 「新生活を迎える方も多いこの時期、図書カードNEXTという贈り物にはどんな気持ちが込められているのかをまず考えていきました。自分の経験として大学の研究室を卒業するときに教授から“これからの人生に活きる本だからぜひ読んでみてほしい”と1冊の本をプレゼントされ、社会人になってからその本に何度も救われたことがあったことを思い出したのです。そこで新生活のタイミングで“大切な人を応援する”といった意味合いで図書カードNEXTをプレゼントしてもらいたいと、今回の企画を立てました」(長谷川氏) 本のタイトルでエールを送るという仕掛けも長谷川さんのアイデアだ。
「親から子どもにエールを送るのってやっぱりくすぐったくて恥ずかしいものだと思ったので、遠回しに伝えられないかなと考えて思いついたのがこのアイデアです。ぼんやりと“憧れの職種に就くため地方から上京する子ども”をイメージし、親はどんなメッセージを送りたいだろうと考えながら本を選定。上から目線や強すぎるメッセージにならないように意識しました」(長谷川氏)
 デザインを担当したのはこちらも堀籠氏。「本棚にサラッと置かれているような雰囲気を出そうと、小物にはこだわりました。前面に押し出すのではなく、さりげなさがありながらも、タイトルがメッセージになっていることにしっかりと気づいてもらえる、そんなバランスに仕上げています」とデザインについて話す。
 「#1万円のエール」企画にはさらなる仕掛けが。なんと東京・北海道エリアでは父から子へ、名古屋・大阪・西部エリアでは母から子へと、エリアごとに異なるバージョンで掲載されているのだ。さらに掲載日である3月20日(日)からは「#1万円のエール」のハッシュタグをつけて贈り物におすすめの本を紹介してもらうTwitter連動企画も展開。作家 岸田奈美氏や歴史を面白く学ぶ「コテンラジオ」パーソナリティの深井龍之介氏など、多くのフォロワーを持つインフルエンサーが自身で選んだ1万円分の本をツイートして企画を盛り上げた。
 最後に「さよなら、サンタさん。」と「#1万円のエール」の企画型広告に2本続けて取り組んだ京谷氏に感想を聞いた。
 「切り口は変えていますが、根底の“子どもの成長を願う親の想い”を表現したいという考えは共通しています。2本通して出稿したことで、親の想いと図書カードNEXTが非常にマッチした商品であると深く伝わっているとうれしいです。今回出稿して感じたのですが、新聞広告は偶然の出合い があるからおもしろい。私自身、出版広告が好きで“こんな本があるんだ”といつも興味深く読んでいます。自分の考えも及ばなかった分野のものが目の前にパッと提示される偶然性こそ、新聞広告の魅力。本屋で本を選ぶのと少し似ているなと思います。今後もこうした新聞の特性をうまく活かしながら、図書カードNEXTの魅力を多くの人に訴えていきたいです」。(京谷氏)

橋口幸生(はしぐち・ゆきお)

電通 クリエーティブ・ディレクター


株式会社電通 クリエイティブ・ディレクター、コピーライター。ソーシャルメディアで支持されるコピー、企画を得意とする。代表作はロッテガーナチョコレート、スカパー!堺議員シリーズ、鬼平犯科帳25周年ポスター、「世界ダウン症の日」新聞広告、貞子3D「世界でいちばん、3Dが似合う女」など。『100案思考』『言葉ダイエット』著者。TCC会員。趣味は映画鑑賞。Twitterフォロワー1万8千人。
https://twitter.com/yukio8494

長谷川輝波(はせがわ・きなみ)

電通 コミュニケーションプランナー/コピーライター


ファッション・ビューティー・エンタメ領域を中心に、ブランディング〜広告制作まで幅広く携わる。過去に趣味で始めたSNSアカウントをフォロワー数万人まで成長させた経験を活かし、企業のSNS運用支援やSNSでの話題化を狙ったキャンペーンの企画に多く携わる。

堀籠正樹(ほりごめ・まさき)

朝日新聞社 メディアビジネス局 アートディレクター/グラフィックデザイナー


CM制作会社、グラフィック制作会社を経て、2007年朝日新聞社入社。広告グラフィック、ブランディング、キャラクター、ロゴ、映像制作などのアートディレクションを行う。朝日広告賞グランプリ・準グランプリ、新聞広告賞他。AR元素周期表企画にて2017年ギネス世界記録認定。