「Web3」

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Web3は、Web2がもたらした「つながる」の次に到来した、「所有する」ためのインターネットアーキテクチャー。ブロックチェーン・NFTといった技術を下敷きとして、巨大プラットフォームに依存しない分散型コミュニケーション環境を構築する。

Web3とは何か?―その盛り上がりの背景

 2021年の特に後半あたりから、急速に「Web3」という言葉を耳にすることが増えたと感じる人々も多いだろう。15年ほど前に注目された「Web2.0」の概念の延長線上にあるものだが、何が違うのだろうか?
 流れを振り返りながら確認すると、Web1の時代はひとつの場(ウェブサイト)に集まり、そこでコンテンツを見るのが私たちのウェブとの携わり方だった。それに対して、Web2ではソーシャルメディアというウェブサイトを跨(また)ぐ横断的なプラットフォームが生まれ、生活者は情報発信者となってインタラクションするようになった。Web1は「Read」のみだったのに対して、Web2は「Read&Write」を兼ね備えるようになったと表現することができる。
 では、Web3ではさらに何が積み上がるのかというと、それが「Read&Write&Own」の「Own(所有)」にあたる。価値が高い&希少性があるといった社会的、経済的にも意味のある「情報」を、巨大なプラットフォーマーに頼ることなくセキュアに運用していこうというのがWeb3の考え方だ。ブロックチェーンやそれを用いたNFTがここ数年注目を集めてきた流れで、それを包括するコンセプトとしてWeb3が唱えられている。さらに、Web3が射程に入れるDAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)型のサービスになると、自分たちでサービスそのものを運用し、その貢献度合いに応じてトークンを発行するといった仕組みが内包されている。
 Web2は私たちのコミュニケーションを豊かにした一方で、ユーザーは巨大なプラットフォームに依存・従属せざるを得ない環境になっているとも言える。そうしたことを問題視する意識がWeb3の思想には込められている。従って、つながるための場は自律分散的になっていくことが志向されるし、その意味で、Web2のようなプラットフォームではなく、プロトコルの群れのようなイメージを持つとよいだろう。Web3の主役はプロトコルなのである。
 とはいえ、Web3は何も突飛(とっぴ)なものではない。ウェブがこれまで実現しようとしてきた、フラットで自律分散的なコミュニケーションを貫徹するという未完の理念に、また一歩近づこうとしているものだと捉えることもできよう。

Web3

広告業界にとっての示唆

 「日本の広告費2021」(22年3月・電通発表)の中で興味深かったのは、インターネット広告費がさらに伸長し、テレビ単体だけでなくマス4媒体をも抜いたということだ。ソーシャルメディア広告費も7640億円(前年比134.3%)と大きく伸長している。それだけのユーザー数と利用時間があるからこそであるし、あえて言うまでもないが、いまや私たちの日常により不可欠な存在になっていることの証左だろう。
 しかしながら、Web3が浸透すると、Web2に属するサービス群が存在感を減じることになるかもしれず、さらに踏み込むならば、ユーザーが自身のデータを自分で管理することになるため、これまでの広告ビジネスの伸長がストップする可能性すら議論されている。
 もちろん、そのように単線的なかたちで事態が推移していくとは限らない。現時点ではまだWeb3系のサービスはハードルが高いし、またWeb2に分類される現在のソーシャルメディアプラットフォーム事業者たちも、座してDisrupt(破壊)されるわけにはいかないということでNFTなどWeb3に属する技術を取り込み始めている。
 まだまだ何が起こるか分からない状況ではあるが、アメリカではAndreessen Horowitz(a16z)のような超一流のベンチャーキャピタルが、Web3が切り開くであろう未来にベットする(賭ける)姿勢を鮮明にしている。私たちも情報のアンテナを十分に張り、今後のシナリオを注視していく必要があるのは間違いない。

天野 彬(あまの・あきら)

電通メディアイノベーションラボ 主任研究員


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1986年生まれ。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。若年層の消費行動やSNSのトレンドに関する研究・コンサルティングを専門とする。近著に『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる―ショートムービー時代のSNSマーケティング―』。その他、『シェアしたがる心理』、『SNS変遷史』、『情報メディア白書』(共著)等。セミナー登壇やメディア出演の経験多数。