「Play to Earn(P2E)」

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Play to Earn(P2E)とは、ゲームをプレーすることで暗号資産の一種であるNFT (Non-Fungible Token、非代替性トークン)を稼ぐこと、およびそれを可能にするゲーム一般を指す。Move to Earn, Sleep to Earn…などP2Eに基づいたバリエーションがどんどん生まれている。

遊ぶことと稼ぐことが両立する時代

 仕事をしてお金を稼ぎ、余暇の時間でゲームをして遊ぶ――これがいままでの私たちの一般的な通念だ。お金を稼ぐことと遊ぶこと、両者は正反対の方向でさえある。しかしながら、近年はそれをどちらも満たすような新しいサービス群が隆盛している。
 二つを両立させるそれらはPlay to Earn(P2E)と呼ばれる。ゲームをプレーすることで暗号資産の一種であるNFTを稼ぐこと(およびそれを可能にするゲーム一般)を指している。Move to Earn, Sleep to Earn…などバリエーションが存在するが、ここでは一括してP2Eとして扱う。また、より広義にはGameFi(Game+Finance)の一部として位置付けられることも付記しておこう。
 ポイントは、特定のアイテムをデジタル資産化(=NFT化)することによって、そのゲーム内外でも自由に譲渡・売却(=二次流通)できるようになること。つまり、いわゆる「サ終」(サービス終了)後も継続して保有することのできる資産となる。だからこそ遊んで稼いで資産化するというP2Eを遊ぶモチベーションとなるし、ここがそれまでのFree to Play(基本プレーが無料)やPay to Win(課金するほど有利になる)タイプのゲームとの差異である。
 経営コンサルティング会社「カーニー」が公表するレポートによれば (*1) 、2022年9月時点でのブロックチェーンゲーム(本稿で言うところのNFTゲーム)のグローバル市場規模は約6,000億円。ゲーム市場全体でみると1~2%にとどまるが、2025年には市場規模が約3兆円、プレー人口は約2.4億人となり、現在の5倍以上の規模になると推測している。
 なお、開発やユーザーの中心は先進国よりも東アジアや新興国が中心となっているが、これはP2Eで稼いで生計を立てられるからだと言われている。

代表的なプラットフォームと今後の行方について

 CryptoKittiesやAxie Infinityといった海外のタイトルが先行して人気を博しているが――どちらもキャラクターを成長させてそれをNFT化(資産化)するというポケモン的な世界観のP2Eゲームである――、日本国内でもスクウェア・エニックスやサイゲームズなど大手ゲームメーカーが今後の重点領域に位置づけている。
 また2022年 日本でもバズった「STEPN」はMove to Earnのコンセプトで開発されたゲームだ。運営はオーストラリアのFindSatoshi Labで、2021年12月にオープンβ版が公開された(*2) 。ゲームの仕組みをシンプルに説明すると、①NFTスニーカーを購入する→②歩くことでゲーム内トークンが報酬として手に入る―というものだ(なお、所有するスニーカーの数が多いほど歩く際の報酬が多くなる)。あとはその資産を保有するもよし、換金するのもよしである(*3)

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 STEPNはゲーム内でAsicsとコラボレーションしたNFTスニーカーを発表し、それが「プレ値」でやりとりされるということも話題になった。ラグジュアリーブランドなどを中心に、アパレルブランドがNFTプラットフォームでコラボレーションを実施するのも昨今の動きとして非常に重要である。
 もちろん、P2E領域にも課題はある。ゲームの内容自体がシンプルで、長期的なゲームを楽しむための展望を打ち出せるものがまだ多くはないということ――中長期的にゲームを楽しむことと、「稼ぐ」要素をうまくゲームの中に混ぜ込むような工夫が今後の普及期には欠かせないだろう。
 今回紹介したタイトル以外にも、Robloxのような巨大メタバースプラットフォームにおいてもP2Eに没頭するティーン(アルファ世代)が増えている。今後、生活者の可処分時間、ひいてはコミュニケーション機会の中で徐々に存在感を高めていく可能性に注目したい。

(*1)“Play to Earn”という新しい価値の登場 ~ブロックチェーンゲーム(BCG)の市場規模と将来見通し~
https://www.jp.kearney.com/issue-papers-perspectives/play-to-earn
(*2)公式ウェブサイトのロードマップを参照すると、2023年の第一四半期に、何らかの「WEB3 SOCIAL PRODUCT」がローンチされるようだ。https://stepn.com/
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(*3)2022年5月下旬にSTEPNは中国ユーザーにサービス提供を停止することを発表。その結果として、靴やトークンの価格が下落するということが起こった点を注記しておく。
天野 彬(あまの・あきら)

電通メディアイノベーションラボ 主任研究員


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1986年生まれ。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。若年層の消費行動やSNSのトレンドに関する研究・コンサルティングを専門とする。近著に『新世代のビジネスはスマホの中から生まれる―ショートムービー時代のSNSマーケティング―』。その他、『シェアしたがる心理』、『SNS変遷史』、『情報メディア白書』(共著)等。セミナー登壇やメディア出演の経験多数。