注目の市場「アクティブシニア」マーケティングとは? 手法から事例まで紹介

日本が超高齢化社会を迎える中、アクティブシニア市場への注目がより高まっています。 健康で積極的なライフスタイルを送り、消費意欲や経済力も高いアクティブシニアは、従来のシニア像とはまた異なる存在です。 購買力と情報感度の高さに着目したマーケティング活動は、企業の成長機会になっており、効果的な手法の研究や実践が進んでいます。 この記事では、注目の市場アクティブシニアについて、マーケティングの手法から事例まで詳しく紹介します。
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Getty Images

 日本では高齢化社会の進展とともに、アクティブシニアが影響力のある消費者、大きな市場として注目されています。
 ここでは、アクティブシニアマーケティングの重要性を解説します。

 一般的にアクティブシニアとは、心身ともに元気で、経済的に安定した活動的な高齢者を指します。
 健康維持や新しい価値観の受容、継続的な学びや趣味の追求、ボランティア活動など多彩なライフスタイルが見られます。
 多くの場合、経済的にも自立し、定年後をポジティブに捉えて人生を自分らしく楽しむ姿勢が特長です。

 マーケティング視点では、シニア世代より下のミドルエイジまでを視野に入れる必要があります。
 なぜなら、50代〜60代は現役世代ですが、将来のシニア市場に対する先行投資としても意味があるためです。早い段階からコミュニケーションや商品設計で関係性を築くことにより、ロイヤルカスタマーを育成し、長期的な購買機会の創出につながります。
 また、この層はデジタルにも柔軟で多様な価値観を持ち合わせており、企業にとって新しい市場開拓のカギとなります。

 「みずほコーポレート銀行の産業調査」によると、高齢者の市場規模は2025年には101.3兆円に拡大すると見込まれています。
 これは2007年対比で1.61倍であり、国内市場をけん引する市場となることが予想されています。
 こうした背景には高齢者の増加があり、医療・介護分野のみならず、娯楽・健康・住宅など生活全般の消費行動の活発化が市場拡大の大きな推進力です。あらゆる産業においてアクティブシニアへの対応が成長戦略のカギとなります。

 アクティブシニアの消費動向として、旅行や趣味、健康などの体験にお金や時間を使う傾向があります。 
 「ソニー生命によるシニアの生活意識調査」によると、物価高のなかでも、体験にお金を惜しまない状況が伺えます。
 2024年現在においてシニアが旅行にかける月額平均が3.2万円と2年連続増加しています。
 さらにグルメに対する出費が1.7万円、健康に対する消費が1.0万円といずれも増加傾向です。 
 また、消費者庁の令和5年版消費者白書によると、高齢者は商品やサービスを購入する際に以下を重視する傾向にあるのも特徴です。

  • 品質や性能の良さ
  • アフターサービスや保証の充実
  • 環境問題や社会課題の解決への貢献

自分自身の豊かさや社会とのつながりを意識し、品質や体験価値、社会的意義を重視した多様な消費行動もアクティブシニアの特徴といえます。

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 アクティブシニアは、積極的で健康的なライフスタイルを志向し、社会や趣味にも意欲的に取り組む特徴があります。
 ここでは、アクティブシニアの特徴について詳しく解説します。

 アクティブシニアは、自分らしい生き方や充実した日常を求め、ライフスタイルや価値観を積極的に取り入れる傾向にあります。
 この世代は、高度経済成長期を経験し、時代の変化とともに多様な価値観を吸収してきた世代です。定年後も目標や夢を持ち、趣味や旅行、学び直しなど新しいことに積極的に挑戦する姿勢が目立ちます。

 アクティブシニアは金銭的な余裕がある層が多く、市場でも高い購買力を発揮しやすい特徴があります。現役時代に経済をけん引してきた経験や、老後資金設計への意識の高さから、充実した日常を求めて積極的に投資する傾向にあります。世代や性別による違いはあるものの、新しいサービスや商品にも興味を持ちやすい消費者層です。
 ただし、経済的な事情からマイペースな消費を志向する層もあり、シニア層全体で多様化が進んでいる点についても押さえておきましょう。

 アクティブシニアは、デジタルデバイスやインターネット、SNSにも積極的に親しむ層も多くいます。スマホやパソコンを使いこなす層も増えており、新しい情報への関心も高い傾向が見られます。
 一方で、テレビや新聞などのマスメディアの接触時間も依然として長く、複数の情報手段を使いこなしているというのも特長です。

 アクティブシニアは、社会とのつながりや地域コミュニティへの参加にも強い意欲を見せる傾向にあります。単なる趣味や消費活動にとどまらず、ボランティアや地域活動、仕事を通じた社会貢献にも積極的です。「誰かの役に立ちたい」「社会と関わり続けたい」という価値観を持ち、共通の趣味や学びを中心としたコミュニティ参加にも積極的です。
 こうした交流意欲の高さが、新しいコミュニティ形成につながる例も多くあります。

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 アクティブシニア市場は、高齢化の進展とともに重要性が高まっており、多様なニーズに応じたマーケティング戦略が必要です。
 ここでは、その成長性や特徴に基づく効果的なアプローチを解説します。

 マーケティング戦略においては、アクティブシニアの多様なニーズや価値観を正確に把握するための市場調査が必要です。年齢、性別、地域、ライフスタイルや価値観の違いを踏まえ、定量的データと定性的インサイトを組み合わせて深掘りし、ターゲティングの精度を高めることが大切です。
 例えば、朝日新聞Reライフプロジェクトによる65歳以上の535人を対象としたアンケートでは、日常的な外出頻度について、「ほとんど毎日」が57.0%、次いで「週3~4日」が29.9%でした。
 また夜の外出について、全体の35.3%が「する」と回答。このアンケートによると、65歳以上の方の夜の外出は以下のような理由で行っています。

  • 勉強会
  • バレーボールクラブや体操教室
  • 映画
  • コンサートやライブ
  • 落語や観劇の鑑賞
  • 民生委員児童委員として地域巡回

 趣味や勉強、地域のボランティアなど、アクティブに活動していることが分かります。
 一方で、「夜間に外出する」と答えた人の年齢や性別は以下のようになっています。

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出典: Reライフ白書心身の健康に重要な外出 どこに出かけてる?

 「夜間に外出する」と答えた人の年齢や性別を分析すると、女性は年代が上がるごとに夜間外出が減少し、男性は年代が上がるごとに増加するという傾向が見られました。
 このアンケートからもわかるように、同じアクティブシニアでも年代・性別で行動や意識に大きな違いがあります。
 そのため、画一的なアプローチではなく、こうしたデータに基づいた緻密なターゲティング設計が重要です。

【朝日新聞】「Reライフプロジェクト」メディアガイド(2025年4月)

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人生後半を豊かに、アクティブに生きるための情報を届けるメディアです。資料ではコミュニティ「読者会議」とのコラボレーションや、メディアタイアップなどの事例をご紹介します。

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 アクティブシニアのマーケティングでは、細分化されたターゲティングによるコンテンツ開発と提供が不可欠です。アクティブシニアには、健康志向型や趣味重視型、地域貢献型など、複数のセグメントがあり、年代や性別、ライフステージごとに価値観や消費行動が異なります。
 そのため、それぞれにカスタマイズされたサービスやコンテンツ設計が、より高い成果につながります。
 例えば、5歳ごとの年齢区分や、地理情報・購買履歴に基づく広告配信を活用することで、細やかなニーズの変化に対応したアプローチが可能です。
 また、デジタル施策とアナログ施策を組み合わせ、個々の状況に合わせた訴求ポイントを工夫することで、アクティブシニアの共感や関心を引き出せます。
 このように、個別最適化されたコンテンツやサービスの開発こそが、アクティブシニア市場でのマーケティング成功に直結します。

 アクティブシニア市場で長期的なブランドロイヤリティを獲得するためには、信頼性と安心感の提供が欠かせません。
 朝日新聞Reライフプロジェクトの「老後の備えに関するアンケート」では、365人中97%が病気や収入など、将来への生活に何らかの不安を抱えていました。回答者365人中76%が60代以上で構成されており、この世代は、不安が強く慎重になる意識が強い傾向がわかります。
 そのため、誠実でわかりやすい情報開示や手厚いアフターサポートなどが購入の決め手になります。
 また、多様化する価値観や生活背景を理解し、一人ひとりに寄り添ったコミュニケーションも大切です。

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 日本のアクティブシニア市場では、高齢者が自分らしく豊かな生活を続けられるためのサービスや取り組み、コミュニティの整備が進んでいます。
 ここでは、アクティブシニアを対象としたマーケティング事例を紹介します。

 アクティブシニアのくらし分野では、自分らしく、健康で生きがいを持って積極的に暮らせるサービスや商品が成果に直結します。
 例えば、分譲マンションとコミュニティを備えた、フィットネスやサークル活動、カルチャー教室、飲食店などが一度に利用できる施設もできています。医療や介護連携、生活サポートも充実しており、体調や暮らしの変化にも柔軟に対応可能です。入居者同士も交流しやすく、年代や経験の異なる仲間と新しい挑戦や趣味を楽しめるような環境づくりが進んでいます。
 このように、さまざまな選択肢と安全・快適な環境が、アクティブシニアの豊かな暮らしを支えています。

 アクティブシニアマーケティングでは、体験型や交流促進型のリアルイベント・コミュニティ活動がシニア層の満足度やエンゲージメント向上に直結します。
 これは体験型イベントや交流を取り入れることで、参加意欲が高まり、孤独感の軽減や自己肯定感の向上につながるためです。
 例えば、ウォーキングや歴史散策、カメラ講座など、楽しみながら仲間と一緒に活動するイベントは人気です。
 なお、朝日新聞社が展開する「Reライフプロジェクト」では、こうした参加・体験型プログラムを重視し、幅広いテーマのリアルイベントやワークショップを展開しています。

 さらに参加者同士が自然につながれる仕掛けと、実践の場を通じ、一人ひとりの「やってみたい」「仲間を作りたい」をサポートします。

【朝日新聞】「Reライフプロジェクト」メディアガイド(2025年4月)

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人生後半を豊かに、アクティブに生きるための情報を届けるメディアです。資料ではコミュニティ「読者会議」とのコラボレーションや、メディアタイアップなどの事例をご紹介します。

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 アクティブシニア市場は、日本の高齢化社会における成長分野として注目されています。
 中でも健康的で自立志向のシニア層は、購買力だけでなく、情報感度や社会参加への意欲が高いのも特長です。
 企業には、年代や性別、価値観の多様性を踏まえた細やかな市場分析と、体験や交流を重視した商品・サービス設計が求められます。誠実で安心感のあるアプローチが、長期的なブランドロイヤリティと市場拡大のカギとなります。

 アクティブシニア層のデジタル活用が進み、YouTubeやFacebookなどシニア世代が親しみやすいSNSや動画チャネルの活用が重要になっています。
 また、オフラインのイベントや新聞などのアナログメディアと、デジタル広告やオンラインイベントを組み合わせたハイブリッド施策も効果的です。一人ひとりに合わせたコミュニケーションを展開することが、ブランド体験の拡大とシニア層の新規開拓に欠かせません。

 アクティブシニア市場で持続的な成長を実現するには、単発の施策だけでなく、信頼や共感に基づく継続的な関係構築が大切です。誠実なサポート、社会貢献、地域との連携、質の高いコミュニケーションが、長期的なブランドロイヤリティの醸成を促します。
 さらに多様な生活背景や価値観を理解し、寄り添い続けることで、企業と消費者双方の持続的な成長につながります。