「毛について、話そう。」―小学校で出張授業を実施。
記事体広告でシック・ジャパンの活動を伝える

 ウェットシェービング国内トップシェアのシック・ジャパンは、2021年から自分らしい体毛のあり方やケアの方法について考える「毛について、話そう。」というキャンペーンを展開している。その一環として、同社は2022年9月、「自分らしさって何だろう?~からだの変化とからだの毛について学ぼう~」と題し、東京・渋谷区内の小学校で出張授業を開催。その模様をまとめた記事体広告を、同年10月14日付朝日新聞朝刊と、同15日付朝日小学生新聞に掲載した。

*インテージSRI+調べ2021年度(2020年10月-2021年9月)ウェットシェービング市場(男性用カミソリ・シェービング剤市場+女性用カミソリ市場の計)金額シェア

出張授業を朝日新聞と取り組んだ理由

20221014_schickjapan_ad 朝日新聞 2022年10月14日付 朝刊 全7段1.5MB

20221015_schickjapan_juniorad 朝日小学生新聞 2022年10月15日付 朝刊 全15段1.3MB

 シック・ジャパンの出張授業「MY FIRST SHAVE」は、産婦人科医の高橋幸子先生が講師を務め、渋谷区立加計塚小学校4年生の児童40名と保護者を対象に開催した。「自分らしさや体毛の多様性とは何か」を考えながら、体毛の正しい知識やケアの方法を学ぶことができる内容で、その目的は大きく2つあった。「毛を好きになってもらうこと」と「正しいケアの方法を知ってもらうこと」だ。体毛に対して「恥ずかしいもの」「そらなければいけないもの」など、先入観や偏見を持つ前に、誰にでも生えてくる自然でポジティブなものだと伝えることが狙いだ。
 同社が2022年5月に小中学生を対象に行った調査によると、60%が「自身の体毛を気にしている」、65%が「何らかの方法でケアしてみたい」と回答。だが、75%が「正しい体毛ケアの方法を知らない」、そして25%が「家族を含め、誰にも教わりたくない」 と考えていることがわかった。同社マーケティング本部 マーケティングコミュニケーションマネジャーの古川滋子氏は、「体毛に興味は持っているが、どうケアしたらいいかわからず、相談することにもためらいがある。そういった悩みを解消するためにも、体毛について話すきっかけをつくり、正しいケア方法を若年層にも伝えていく必要があると考えました」と話す。

2211_schickjapan_01
古川滋子氏

 その方法として出張授業を企画し、朝日新聞と一緒に取り組んだ。朝日新聞をパートナーに選んだ理由について、古川氏はこう話す。「出張授業の企画から記事体広告として掲載するところまで、朝日新聞に枠組みがあったことが決め手になりました。出張授業は初めての試みだったので、協力してくれる小学校を探すことや、授業の組み立て、講師の選定、そして記事体広告の内容までトータルでサポートしてもらえたので、とても心強かったです」

体毛の固定観念の払拭を目指すシック・ジャパンのリブランディング

 出張授業の背景にあるのが、体毛ケアの選択肢の広がりや、体毛に対する価値観の変化だ。そうした状況も踏まえ、カミソリブランド「Schick」が日本に上陸してから約60年となった2020年にリブランディングを行い、製品の機能訴求が中心だったコミュニケーション戦略を刷新。カミソリで剃る「毛」のあり方に着目し、啓発活動を展開している。小学4年生向けの出張授業は、その施策のひとつだ。
 古川氏は、「仕方なく毛を剃るのではなく、多様な自己表現のひとつとして、体毛をポジティブに捉えていこうと考えました。シックの製品を手にした時、自分のスタイルを表現するようなワクワクした気持ちになってほしい。そんな思いを込めて、2020年に『It's in your hands すべては、その手からはじまる。』というタグラインをつくりました」と話す。そのアクションとして2021年に立ち上げたのが、「毛について、話そう。#BodyHairPositive」というキャペーンだ。
 2021年に10代から20代の女性を対象に、体毛にまつわる調査を実施したところ、88.7%の人が「体毛は自由であるべき」と考えていることがわかったという。だが、実際には人の目を気にして「仕方なく体毛ケアをしている」という人は少なくない。本来、体毛はケアしても、しなくてもどちらでもいいものだ。同社は「自分らしくあることが、美しさでもある」と考え、そうした考え方を少しでも社会に浸透させていくことがキャンペーン「毛について、話そう。#BodyHairPositive」の目的だ。「体毛は、ケアしたい際に自分らしい方法を選べばいいという考えです。自分の体毛について考え、もしシック・ジャパンの製品を手にとった時には安全に使ってもらえるように、正しいケアの方法も発信しています」(古川氏)。同キャンペーンは、2022年も継続している。4月に発表した「ムダ毛」という表現をやめます、という宣言も大きな話題となった。そして9月には、若年層向けの施策として加計塚小学校での出張授業を開催した。

産婦人科医とともに性教育を含めた体験型授業

 授業は、小学4年生にとって有意義なものにすることを目指し、性教育を含めた内容にした。性教育の普及や啓発に尽力している産婦人科医の高橋幸子先生に講師を依頼し、精度の高いコンテンツを一緒に作りあげたという。「毛が生えるところはプライベートゾーンを含むので、性や生命の誕生などの話をした上で、なぜ毛が生えてくるかを伝えたほうが、毛に対する印象がポジティブなものになると思いました。そして、もし毛が気になってケアしたくなったら、どうしたらいいか。その選択肢としてカミソリがあり、使い方などを伝えていく。飽きずに最後まで授業に参加できるように、ただ話を聞くだけではなく、考えたり体験したりする内容にしました」
  授業は2時間。高橋氏の出産シーンの映像をダイジェストで流し、生命の誕生から、人の性の種類や、第二次性徴の心と体の変化についても伝えたという。そして、子どもでも安全に使うことができる、同社のソープ付きシェーバー「イントゥイション」の現物で使い方も伝授した。出産シーンの映像や、男女の性の話をした時、ひやかしの声があがらないように、「みんな科学者になったつもりで、知らないことを知った後は、『うーん、なるほど』と腕を組んで言おう」と事前に指導して練習をしたという。「センシティブな話をすると、高橋先生は『じゃあここで、みんなでリアクションしよう!』と声をかけるのです。そしてみんなで『うーん、なるほど』という。そうすることで、児童たちは落ち着いた状況を保つことができ、茶化したり恥ずかしがったりすることもなく、積極的に発言していました」
 授業の後、児童と保護者にインタビューやアンケートを実施したところ、「体毛は恥ずかしくないことがわかった」「ケアの仕方の理解が深まった」といった回答が集まったという。「当初の狙いどおりの結果で、本質的な授業ができたと思っています」(古川氏)

授業後は、体毛の正しいそり方がわかったと答えた児童の割合が98%に。
体毛について話すことは恥ずかしくないと回答する割合も増加した

シック・ジャパンだからできる啓発活動、社内でも高く評価

 授業の模様は記事体広告として、10月14日付朝日新聞朝刊と、同15日付朝日小学生新聞に掲載した。その意義について、古川氏はこう話す。「読者層が厚く、信頼できる新聞にリポート記事を広告特集として掲載できることは、とても魅力に感じていました。特に、今回は性教育やセンシティブな内容を正しく伝えることが重要なので、マスメディアの中でも新聞独自の信頼性が寄与したと思っています」
 新聞広告では、シェーバー「イントゥイション」のプレゼントキャンペーンも実施した。プレゼントへの応募も想定以上にあり、応募時のアンケートも「学ぶことのある回答が多く、朝日新聞の読者の層のすばらしさを実感しました」と古川氏。たとえば「子どもが体毛を気にする年齢にさしかかっていて、家庭内で会話する機会を探していた。この記事をきっかけに話したい」「子どもが体毛の濃さを気にしていたが、同じ学年の人たちも気にしていることがわかって、特別なことではないと安心した」といった回答が寄せられた。また、「個人でも参加できる機会があれば、ぜひ参加したい」という声もあったという。「新聞に広告掲載することで多くの方に私たちの思いや活動が認知され、賛同者が増えたと感じています。今後は、何か双方向のコミュニケーションもできたらいいなと思っています」。今回の授業の内容は冊子にまとめ、参加した児童や保護者に配布した。「家族内で毛にまつわる話ができることも、目指していたことのひとつ。授業で教わったことを家族に話せるように、自宅に持ち帰れる冊子も用意しました」
 体毛の固定観念を取り払うことは、人々の生きやすさにもつながる重要なテーマだ。シック・ジャパンだからできる社会的な啓発活動で、共感する人は多いだろう。そうした取り組みを続けることがシック・ジャパンのファンを生み、ひいては製品の売れ行きにもつながっていくはずだ。出張授業を受けた子どもたちの記憶にも残り、自分でカミソリを買う年齢になった時に思い出す可能性も大いにある。「出張授業の取り組みは社内でも高く評価され、表彰もされました。『毛について、話そう。』のキャンペーンは意義がある活動だとプロジェクトメンバー一同自負しているので、今後も継続していけたらと思っています」と古川氏は話す。

2211_schickjapan_04