家や暮らしの中にある
「小さな幸せ」を丁寧に表現
「家に帰れば、積水ハウス。」のシリーズは、テレビCMと連動する形で新聞広告を出稿し、10年以上の歴史がある。2023年1月1日に朝日新聞に掲載された全面広告には、空を見上げる安藤サクラさんが登場。故郷への想いと、未来へのバトンをつなぐ願いが込められ、わが家が世界で最も幸せな場所であることが文章で綴られた。
「当社は戸建て事業だけでなく、多角的な経営をしており、それぞれのステークホルダーやターゲットに即したコミュニケーションを図っています。新聞の読者は年齢層が高く、しっかりと内容を読んでいただけるのが特色です。昨今は、ともすると忘れられがちな『家』や『暮らし』の中にある『小さな幸せ』を季節ごとに丁寧に表現し、当社が社会に対してできることを、企業メッセージとして緩やかに発信するために、活用させていただいています」と足立氏は話す。
住宅メーカーであることをハード面からストレートにアピールするのではなく、積水ハウスが提供する住宅で、どんな生活が実現するのかといった提案や、今の世の中で求められていることに対するメッセージを発信することを重視。2020年から約3年間のコロナ禍の中では、社会を閉塞感が包み、外出しにくい雰囲気がある中で、どうすれば幸せや未来への希望を伝えられるかを議論し、様々な広告展開に結びつけてきた。「新聞の読者が共感したり、幸福な読後感を得られたりするような内容を常に意識しています」と足立氏は明かす。
新聞の特性を生かし、見開いた時のビジュアルの強さにも気を配っている。毎回大きく掲載している写真は、多彩なパターンを考えて丁寧に撮影したたくさんの枚数の中から厳選。人物が横を向いている場面が多いのは、人の顔が正面を向いていると読者の注意がそこに引かれ、全体のトーンが崩れてしまうためだと語る。
「当社の住宅を購入して20年、30年になるお客様も多くいらっしゃいます。そうしたオーナー様とのリレーションづくりはとても大事です。新聞広告を通して、積水ハウスを選んで良かったと、喜んでいただけるとありがたいと思っています。掲載後には気持ちのこもったお手紙やお葉書をいただくことが多く、私たちの励みになっています」
長く住み続けたい家と
良質な住宅ストックで社会に貢献する
2023年からは、積水ハウスが手掛ける新たなプロジェクトも新聞広告で紹介している。6月20日に掲載したのは、新たなデザイン思想に基づく家づくり「life knit design(ライフ ニット デザイン)」を伝える広告。「積水ハウスは、『長く住み続けたい家』へ」のコピーとともに、日差しが部屋に差し込む、心地よさそうなビジュアルが印象的だ。
「当社は2020年に、“「わが家」を世界一幸せな場所にする”をグローバルビジョンに掲げ、住まわれる方の豊かな日常作りによりフォーカスして取り組んでいます。『life knit design』は2023年6月にスタートしましたが、プロジェクトの一つのキーワードが『愛着』。経年変化していくことでより魅力を増したり、環境に配慮した部材を使ったり、お客様のライフステージの変化に合わせて間取りを変えやすくしたりといった、愛着を持っていただける住みやすい家づくりを目指しています」と足立氏は説明する。
この広告では、暮らすほどに増す愛着をどのように表現するかが課題だったという。「新築から5年、10年が経ち、住まいに味が出て、ますます素敵なわが家になっているということを、今の時点で伝える難しさがあります。積水ハウスを選んで良かったとお客様に思っていただけるように、コミュニケーションに関わる私たちはさらに努力していきたいです」
8月23日の全面広告では、積水ハウスが共同建築事業「SI(エス・アイ)事業」を9月から立ち上げ、長年培ってきた安全・安心の耐震技術を広く開放することを伝えた。木造住宅のスケルトン部分である基礎・構造躯体を積水ハウスが設計・施工し、インフィル部分の外装・内装・設備をパートナー企業が施工して販売するもので、関東大震災から100年の節目に合わせ、耐震性に優れた良質な住宅ストックの形成に貢献する業界初の取り組みに注目が集まっている。
「日本は地震大国ですから、耐震性の向上は社会課題です。私たちと同じ思いを持つ企業が一緒になって地震に強い安心な住まいをつくることは、将来の良質な住宅ストックの形成につながるのはもちろん、安全・安心をお届けするという私たちの社会的責任でもあります。当社の姿勢を世の中に伝えるには、ニュースと親和性が高い新聞広告が適していると考えました」
男性育休を積極的にリード
時代の変化を的確にくみ取る
社会との関係性で考えると、積水ハウスが発信する男性育休を考えるプロジェクト「IKUKYU.PJT」も大きな反響を呼んでいる。「男性が当たり前に育休を取得できる世の中にしていきたい」というビジョンを掲げ、語呂合わせで9月19日を「育休を考える日」に記念日制定。この日の前後から、男性が育休を取得できる社会づくりを応援するメッセージをテレビCMやイベント、WEB動画、SNSなどで発信しているのだ。
「当社が男性育児休業の取得促進を2018年から始めたのは、社長の仲井嘉浩がスウェーデンを視察した時に、公園でベビーカーを押しているのが全員男性だった様子を見て、豊かさを感じたことがきっかけです。男性の育休取得を自分たちでできる範囲から始めようと、3歳以下の子どもを持つ社員を対象に1カ月の取得が可能になりました。1年後には対象者全員が育休を取得し、社内でも良い効果が現れたのです」と足立氏。
上長の育休中に仕事を任された若手社員が成長したり、人員構成が変化することで業務の見直しや効率化を図れたりと、副次的な効果も大きかったと振り返る。こうした体験を世の中に広めるために始めたのが「IKUKYU.PJT」。プロジェクトに賛同する企業・団体の輪が広がり、2023年12月時点でその数は119にものぼる。積水ハウスが始めた施策は、男性育休を広げる上で社会のプラットフォームの役割を果たすまでになっている。
「業界を取り巻く環境が目まぐるしく変わる中で、従来は『当たり前』と感じていたことが通用しなくなっています。男性育休の取り組みも、生活に根ざす企業として、私たち自身から変化しなければならないとの思いからスタートしました。『いい家』の定義も変化しており、私たちが今の時代に、どういうことができるのかを常に考えていかなければなりません。長く愛着を持って住み続けられる良質な住宅のご提供は、サステナブルな社会の実現にもつながります。お客様のニーズを的確にくみ取り、今後もさまざまなメディアを通して、積水ハウスを発信していきたい」と足立氏は結んだ。