マーケティングファネルの概要
マーケティングファネルは、見込み客が商品・サービスの購買や成約に至るまでの行動過程を段階的に分けたフレームワークの一つです。
マーケティング活動で得られた成果をマーケティングファネルに当てはめていくことで、見込み客数の変化を把握できます。
そして、各段階の増減から施策が正しかったか、何が間違っていたかを認識することで改善に役立てることができます。ここでは、マーケティングファネルの概要を紹介します。
ファネル理論とは
ファネル理論とは、消費者が商品やサービスを認知してから購入するまでをステージ化した際に、段階を経るごとに見込み客が絞り込まれることです。
ファネルは、直訳すると逆三角形のすり鉢状の「漏斗(ろうと)」を意味します。
マーケティングファネルを理解するうえで重要となるのが、「AIDMAの法則」と呼ばれる以下の顧客の購買プロセスです。
▶ Attention(注意)
▶ Interest(関心)
▶ Desire(欲求)
▶ Memory(記憶)
▶ Action(行動)
下に向かうほど見込み客の購買意欲は高まりますが、一方で数は減っていきます。
例えば、商品の名前を知っている人はたくさんいますが、商品に興味を持ったり、実際に購入したりとなると人数も段階的に減っていくのが一般的です。
これを消費者が商品を認知してから購入の購買フェーズに当てはめて図式化したものが、マーケティングにおけるファネルとなります。
マーケティングファネルの構造
マーケティングファネルにはさまざまな種類がありますが、AIDMAの法則を基に作られたパーチェスファネルと呼ばれるモデルがスタンダードです。
パーチェスファネルの構造は以下の3層に分かれていて、それぞれに名前があります。
▶ アッパーファネル(トップファネル)
▶ ミッドファネル(ミドルファネル)
▶ ロウワーファネル(ボトムファネル)
構造化することで各フェーズにおける人数の減少が把握できるため、マーケティング施策の改善に効果的です。
例えば、オンラインショップで伸び悩んでいる商品があった場合、単に消費者の購買行動全体を見るだけでは売上を伸ばす方法が見えてきません。
マーケティングファネルに見込み客の購買行動を落とし込み、消費者がどのフェーズでどれくらい離脱しているかを明確にすることで、課題を洗い出して対策を講じることができます。
ファネルの各ステージの目的と特徴
ファネルの各ステージの目的と特徴は以下の通りです。
アッパーファネル(トップファネル)
アッパーファネル(トップファネル)とは、認知にあたる層で消費者の購買プロセスにおける初期のファネルです。ターゲットに名称を知ってもらう段階となります。
マーケティングファネルにおいては、できるだけ多くのエンドユーザーに知ってもらうためのフェーズです。比較・検討や購買のプロセスにつなげるためには、認知度を高めるための仕組みや興味を引くコンテンツを提供していく必要があります。
ミッドファネル(ミドルファネル)
ミッドファネルとは、自社商品をすでに認知し、ある程度の興味を持ちつつある真ん中のファネルで、ミドルファネルと呼ばれる場合もあります。
他社商品やサービスと比較するフェーズの見込み客を指しており、商品の購入意向が高まりつつある状況です。
数ある商品やサービスから自社のものを選んでもらう段階の重要な位置であるため、見込み客に継続的なアプローチを行い、自社商品に対して興味を引き出し続ける必要があります。
また、ミッドファネル(ミドルファネル)の見込み客は、商品やサービスが自分に適しているか知りたいと考えています。そのため、詳細情報や踏み込んだ専門的なコンテンツの提供、実際に商品を利用している状況やメッセージなどを伝え、顧客ニーズを引き出すことが重要です。
ロウワーファネル(ボトムファネル)
ロウワーファネル(ボトムファネル)とは、自社の商品やサービスを購入する直前、または購入時の段階に至っているファネルです。
ボトムファネルの段階に至った見込み客は、すでに商品やサービス情報をある程度理解しているため、具体的な使い方や購入後のサポートといった提案や魅力づけがポイントとなります。
また、購入や契約に至るまでの間、顧客がどのようなことに対してネックに感じているかをヒアリングして解決策を示すことも大切です。例えば、商品やサービスの割引、アフターサポートの有無などが挙げられます。
態度変容の重要性
マーケティングファネルでは、態度変容が重要な要素の一つです。
広告プランニングを行う際に目的となるのは広告効果の最大化で、効果を見る場合にはどれだけ多くの人に見られたか(リーチ数)が指標となります。
しかし、効果を構成する要素ではリーチ数と同じくらい態度変容も重要で、広告効果は「リーチ×態度変容」を掛け合わせることがポイントです。
例えば、広告を10万人が見たとして関心を持った人が1%なら、ミドルファネルの見込み客は1,000人となります。一方、広告を1万人が見たとして関心を持った人が10%なら見込み客は1,000人になるため、それぞれの広告効果は同じといえるでしょう。
マーケティングファネルでは、態度変容も考慮したうえで分析を行う必要があります。
新聞広告は、態度変容効果が高い広告媒体の一つです。なぜなら、新聞は啓発的な性格をもったメディアであることから、読者は広告を含めて社会的なメッセージとして受容する傾向があるためです。
また、熱心に見る、情報を精読する人が多いことで内容理解にもつながり、信頼性の高さをベースにポジティブなイメージにもつながりやすいです。
デジタル広告は情報が瞬時に流れてしまうことが多いですが、新聞は情報が手元に残り続けることも大きな強みといえるでしょう。
メディア・エンゲージメントを捉えるひとつのアプローチとして、広告による態度変容に着目した研究を行う、ビデオリサーチ 吉田正寛さん。広告効果を〝リーチと態度変容の掛け合わせ〟と解説する寄稿記事はこちらから。
ミッドファネルへの新聞広告の効果
新聞広告がミッドファネルにもたらす効果として、ブランドイメージ形成による同ステージのリフトがあります。
また、新聞は約30cmの距離で自発的に開いて見る媒体であり、デジタル版もニュースや論考を読むものであるため、情報収集に対する意欲の高い人が多いです。
同じ広告メッセージでも見る人に与える印象やイメージが異なり、商品やサービスに対してもネガティブな印象を持ちにくく、ポジティブなブランド形成につながりやすい特徴があります。
まとめと展望
ファネルを活用することで、ユーザーが購入や離脱に至るプロセスを把握できるメリットがあります。
さらに、顧客の行動やニーズをステージで分けることによって、段階的なマーケティングができるようになるでしょう。
効果的な施策や戦略の立案を行うためにも、ファネルを活用して顧客の行動やニーズを把握することが大切です。
マーケティングファネルを活用した広告戦略
マーケティングファネルを広告戦略で活用するためには、それぞれのステージごとで最適な広告施策を当てはめることがポイントです。
例えば、アッパーファネルの段階ではテレビCMで知名度を高め、ミッドファネルに移行した消費者をターゲットに新聞広告でロウワーファネルに落とし込み、ショッピング広告や比較サイトなどで購買につなげる方法があります。
また、ステージごとの効果を分析することで、「それぞれのステージのユーザーにあっている広告施策ができているか」「アプローチできていないステージはないか」などの視点も見直すことが可能です。
いずれもマーケティングファネルに当てはめるだけで行うことができるため、簡単に広告施策を可視化できるでしょう。
新聞広告の効果的な活用法
新聞の広告活用には、「商品の品質や性能を詳しく知る」「商品やサービスの価格がよくわかる」「資料請求や問い合わせをしたことがある」「広告の内容をしっかり見る(読む・聴く)」のような特性があります。
アッパーファネルからミッドファネルに移行した消費者に対し、商品やサービスの価値をより細かく伝えることや、ブランドイメージを向上させたい場合にも役立つでしょう。
また、新聞は発行部数の多さからリーチメディアと捉えられてきた面もあり、アッパーファネルの領域にも強みを持つ広告媒体です。
特にWebとの関与が薄い中高年以上がターゲットに多く含まれる場合、新聞広告の方が認知拡大につながりやすいメリットがあります。
もちろん、Web広告と併用することでより多くの人に商品やサービスを認知してもらえるようになるでしょう
マーケティングファネルの進化
近年、マーケティングファネルはデュアルファネル(ダブルファネル)が主流になりつつあります。デュアルファネルとは、パーチェスファネルとリバースファネル(インフルエンスファネル)を合わせたファネルです。
認知を広げるアッパーファネルから購買に至るまでのロウワーファネルだけでなく、その先の推奨や共有など購買後のリバースファネルを結合する考え方であり、最近定着してきた概念といえるでしょう。
そして、将来的に優良顧客になる可能性が高いターゲットに対して、購入後は継続的にコミュニケーションを取りながら、ロイヤルカスタマーに育成する必要があります。
そのためには、カスタマージャーニーの作成や、マーケティングファネルに合わせたKPIの設定が重要です。
今後は消費者の購買行動がより複雑化することが予想されるため、マーケティング担当者は各広告媒体が持つ強みを理解し、商品やサービスに最適なファネルの構築が必要になるでしょう。
デジタル広告が広く活用され、情報接点や接触時間量が増える中、繰り返し提示される広告に対して生活者は嫌悪感を示しはじめたことが指摘されています。「嫌われない」メディアプランニング、広告の受容性を高めるために必要な思考法とは-。 広告出稿配分や広告効果検証の分析、コンサルティング業務に従事する、ビデオリサーチの吉田正寛氏に話を聞きました。