ファンマーケティング 共感とつながりを生むマーケティング手法 ファンを大切にする企業だけが勝ち残る

 商品やブランドを愛し、長きにわたり購買し続け、その良さを周囲に広めて、新しい顧客も連れてきてくれる――そうした「ファン」の存在は、企業のサステナブルな成長に欠かせないものです。
 いま注目されているファンマーケティングについて、なぜ注目されているのか、必要とされている理由、そのメリット、注意点、既存のマーケティング手法との違い、企業の実践・成功事例などについて、幅広く解説します。

目次

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 近年、消費者・顧客とのエンゲージメント強化からブランディングにつなげるマーケティング手法として注目されている「ファンマーケティング」。「ファンクラブ」や「ファンミーティング」など、「ファン」とは聞いて連想するのは、アーティストやアイドル、俳優、また特定のスポーツチームなどが好きで熱烈に応援する人といったイメージでしょうか。
 ファンベースカンパニー取締役会長・ファンベースディレクターの佐藤尚之氏は、「ファン」を「企業やブランド、商品が大切にしている『価値』を支持している人」と定義しています(『ファンベース』ちくま新書・2018年)。ブランドや商品には、価格や性能・スペックといった「機能価値」、その商品にまつわる思い出、ブランドへの愛着といった「情緒価値」、企業やブランドの社会課題へのコミットへの共感といった「社会価値」など、様々な「価値」が内包されています。ここで言うファンとは、そうした「情緒価値」や「社会価値」に対して真の価値を感じる人ということになります。

1_「情緒価値」や「社会価値」に対して真の価値を感じる人

「機能価値」は他企業・ブランドに追随・模倣され、すぐに陳腐化しますが、「情緒価値」や「社会価値」は簡単には真似できず、そのブランドのオリジナリティーを形成します。そうした「情緒価値」「社会価値」を大切にする「ファン」が、企業やブランドを中長期に渡って支持し、企業と共創して商品やブランドの成長を支えていく。そうした考えがファンマーケティングの基本的なスタンスとなります。

 さて、「推し活」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。元々好きなアイドルやアニメ、アーティストなどを熱烈に応援するいわゆる「オタク」のファン活動を指していましたが、今やエンタメ領域だけでなく、商品やブランドなど幅広い領域で自分の好みの人・モノ・コトを楽しみ、とことん追求、応援するという行動全般を示す意味合いで取り上げられることが多くなっています。その国内市場規模は約6,000億円とも言われています。
 「推し活」の特徴として、
▼「推し」の能力・技量、また性能・特長が好きなだけでなく、そのプロセスや世界観を愛しリスペクトしている
▼何度でも購入、リピートし、長くファンであり続ける
▼ファン仲間で話題や体験を共有し、強固なコミュニティーを形成している
▼「推し」の魅力をSNSなどで自発的に発信、伝えている
などが挙げられると思いますが、これらはまさにファンマーケティングを構成する要素と重なり合うものです。

2_「推し活」の特徴

 アイドルやアーティストのファンには、そのファンを総称して呼ぶ固有の「愛称」また「シンボルネーム」といったものがあります。たとえば日向坂46なら「おひさま」、BTSなら「アーミー」。これは同じ「推し」を抱くファン同士のつながりを強めると同時に、推しと一緒に目標に向かって歩み、その世界を共に作り上げる仲間という意味づけもあると思います。「推し」は、まさに共創マーケティングを体現するものとも言えるでしょう。

3_パレートの法則1

 そして、これも広く言われていることですが、「パレートの法則」。売上の8割が2割の顧客によって生み出されるという考え方です。少数であっても繰り返し購入するコアな消費者=ファンが企業にとって最大の利益をもたらしているということです。ファンマーケティングは、こうした「2割」のファンを大切にして共創していくことで、さらなる価値を生み、企業の成長につなげていくという考え方になります。

 それではなぜ今、ファンマーケティングが注目されているのでしょうか。社会的要因やマーケティング的視点などから見てみましょう。

 少子高齢化、人口減が続きマーケット自体が縮小していく局面にある日本。経済の停滞した「失われた30年」が続き、今後も国内市場の大きな成長は望めないかもしれません。そうした状況の中では、新規顧客の獲得がますます困難になっていくことは明らかです。既存顧客にいかにリピート消費してもらうか。企業は一人の顧客と長く付き合うことでLTV(ライフ・タイム・バリュー)を上げることをこれまで以上に追求することが必要になっていくでしょう。それは企業が安定的な収益を上げていくために、不可欠の要素となっているのです。

 多くの商品領域で、品質が向上することによって、性能やスペックだけで他社の商品と差別化することが難しくなっています。いわゆる商品のコモディティ化です。利便性が増し、クオリティオブライフ(生活の質)の向上をもたらしたことは消費者にとって大きな恩恵ですが、企業側からすれば数多の類似商品の中から、自社商品を選んでもらうことの困難さが、より増しているということにもなります。
 加えて、人々が日常使う、消費する商品の大部分は、普及率が9割を超え、ほとんどの消費者が購買・使用経験のある成熟商品となっています。こうした超成熟市場では、消費者の顕在するニーズに応える商品の選択肢が増える一方で、その商品ラインアップの多さにより、かえって消費者の選択に迷いが生じることがあります。こうした現象について、よく引き合いに出される理論としてコロンビア大学のシーナ・アイエンガー教授が提唱した「ジャムの法則」があります。

 博報堂メディア環境研究所「メディア定点調査」2022年 https://mekanken.com/mediasurveys/ によると、日本人一人当たりの一日のメディア接触時間は約445分にもなります。21年に比べ数分減ってはいるものの、この数値は年々伸びる傾向にあります。情報があふれかえる時代、一日の「可処分時間」を複数のメディアが奪い合う中、メディアに乗せ特定のターゲットに向けて発信される広告は、ますます消費者に届きにくくなっていく状況にあると言えるでしょう。
 膨大な情報、データの海の中、発信する一つの情報が消費者に届くことはまずないと割り切って考えるべきではないか。「ファンベースマーケティング」を提唱する佐藤尚之氏は、それを「情報の『砂の一粒』時代」と表現しています。

4_世界に流通する情報量

 「最も大きな転換点は、情報が爆発的に増えた2005、06年ごろだと思います。2004年にブログが普及し始め、ミクシイが開始されました。さらに、2005年にユーチューブも登場します。個人が情報を気軽に発信できるようになり、情報が天文学的に増加したのです。そのため、伝えたい相手に情報を届けることが困難になってきた。私は『情報‘砂の一粒’時代』と呼んでいますが、『メディアニュートラル』という考え方は終焉(しゅうえん)を迎え、コミュニケーション全体を考える『コミュニケーションデザイン』という手法へと切り替わっていきました」
(広告朝日:佐藤尚之/変化し続ける広告コミュニケーションの潮流) 

 ほとんどの広告が意図したターゲットに、想定する通りには届かないことを前提とする中、ではいったいどのようなコミュニケーションが有効なのか。佐藤尚之氏は、そうした状況の中では、全くその商品を知らない新規顧客より、既にその商品に興味関心を持っている人=ファンに対するアプローチこそ有効であり、そしてSNS、クチコミなどを介した信頼できる友人、家族からの情報、リコメンドが強い価値を生むと言っています。
 これはファンマーケティングのまさに土台となるコミュニケーション手法です。

 商品・ブランドの品質・機能、価格の優位性だけではモノが売れない時代。消費者の消費マインドのトリガーとなるのは何か。そのキーワードのひとつが、ストーリーブランディングです。

(広告朝日:川上徹也/コンテンツマーケティング成功の鍵は会社としての志を明確にし、宣言すること)

 前述したように商品の品質など「機能的価値」は模倣、追随されやすく、コモディティ化していきますが、商品の「情緒的価値」はその商品のオリジナリティーを形作ります。人々の心を動かすのは、その商品の開発プロセスなどに紡がれた「ストーリー=物語」です。品質は区別がつかないかもしれませんが、それが生み出された背景に独自のストーリーがあれば、そこに共鳴した人がファンとなり、ブランドを構成する核となる要素となっていきます。 

5_物を売るな、物語を売れ

 ファンマーケティングの考え方は、このストーリーブランディングとも親和性が高いものです。ファンはそうした商品・ブランドの独自の物語に価値を見出し、自分ごと化することによってそれを支えていくものだからです。ファンは自身のライフスタイルや嗜好とシンクロする、その商品やブランドがまとう「世界観」を買っているのです。
 さらに最近では、ストーリーブランディングの「進化形」として、「ナラティブ」という考え方も提唱されています。企業側がブランドの物語を提示する「ストーリー型マーケティング」に対し、ブランド体験を通じてユーザーそれぞれが物語を紡ぎ出せる状態をつくるのが「ナラティブ」です。「ブランドが完結した物語を語るストーリーと異なり、ナラティブは物語の結果は定まっておらず、これから決定される。ブランド体験を経たユーザーそれぞれがアクションを起こすことで、ユーザー自身の物語となって各人のブランド体験として結末を迎える。~ユーザーとともにブランドの物語を作り上げ、ブランドとユーザーが一緒に進化していく。このような状態が、ナラティブ型マーケティングの持つ大きな可能性」ADKクリエイティブ・ワンの小塚仁篤氏は述べています。(広告朝日:小塚仁篤/マーケティングキーワード「ナラティブ」)
 「ユーザーとともにブランドの物語を作り上げ、ブランドとユーザーが一緒に進化していく」ことは、まさにブランドのコアなファンが体現していくことであり、ファンマーケティングの目指す姿でもあります。

 ファンマーケティングの注目度が高まっている背景には、広告コミュニケーション手法の変化も影響しています。そこでは「共感」がキーとなります。前述の佐藤尚之氏は、ここ30年ほどの広告コミュニケーションの変化をとらえて、「広告は、企業の思いを一方的に発信するので一方通行です。一方、コミュニケーションデザインは、相手の気持ちを踏まえた伝え方を考えます。コミュニケーションデザインという言葉は以前からありましたが、広告の手法として本格的に取り入れられるようになったのは、2005年以降のことです。その後も情報は、さらに増えていきます。2008年には、日本でもツイッターやフェイスブックが登場し、iPhoneも発売。ソーシャルメディア(SNS)が普及したことで、生活者は「リツイート」やシェアなどワンクリックで情報を発信できるようになりました。友人関係や人脈など、人とのつながりがメディアになった。これは大きな変化です」と言っています。
(広告朝日:佐藤尚之/変化し続ける広告コミュニケーションの潮流)

6_コミュニケーション手法の転換

 また、博報堂ケトルの嶋浩一郎氏「市場が成熟してモノが売れなくなり、ネットやSNSの普及でマスメディアの影響力が落ちます。デジタルネイティブの若者の支持を得るには、共感されるブランドであることが大事だと言われるようにもなりました。その結果、企業から一方的に情報を発信する広告に比べ、共感によって人から人へと伝するコンテンツの重要性が増しているのでしょう」と述べています。
(広告朝日:嶋浩一郎/潜在欲求を言語化し、共感を生む コンテンツには無駄や余白が大事)
 『共感ブランド』の著書もある相模女子大学教授の金森剛氏は、「ブランドには『イメージブランド』『機能ブランド』『経験ブランド』の三つがあります」「現代の新商品、新サービスの多くは、消費者が実際に経験し、共感して初めて広まる『経験ブランド』です。消費者の共感が重視されるようになった背景には、そのような事情もあります」とし、「価値観が多様化した現代社会では、多くの人から共感を得ることは難しくなっています。そのため企業は、ある特定の層により深く共感してもらい、熱狂的なファンをつくり、ブランドロイヤルティーを高めていく。そのようなセグメントマーケティングに力を入れています」と述べ、企業のコミュニケーションが「共感」を重視したコミュニケーションに軸足を移しているとしています。(広告朝日:金森剛/「すごい!」と思わせるより「元気づける」 自己効力感を高めるコミュニケーションへ)
 「共感マーケティング」はあらゆる消費シーンで前提のものになりつつあります。そうした流れもファンマーケティングを後押しするものでしょう。

 ここ数年、「応援消費」という言葉がよく言われるようになりました。2011年の東日本大震災時に被災地の支援を目的に地元産品を買ったりする消費行動を指すことから広まったものですが、この数年のコロナ禍を経て再び注目され、定着しつつあるように思います。東京都立大学経済経営学部教授の水越康介氏(マーケティング論)は、「応援すること、支援すること、誰かを助けること、これらが消費という経済活動と結びつけられ、必然のつながりを有するようになっていく~それはおそらく、コロナ禍においていよいよ顕在化した新しい段階の消費社会を示していると言っています(『応援消費 -社会を動かす力』岩波新書)。コロナ禍では、活動ができなくなったアーティストなどを支援する意図でオンラインライブに参加するといった行動などが見られました。こうした行動は必ずしもその商品やブランドのファンだけが取るものではないかもしれませんが、「応援」「支援」といった意思・感情が消費の動機付けとして重要な要素を占めてきていることの現れといえます。
 消費者・顧客に応援し続けたいと思わせるには、ブランド自体が新たな価値を提供していく必要があります。いま多くの企業でファン・コミュニティーを構築する動きがあり、会員特典や限定商品、リアルイベントなど顧客にいかにそのブランドに愛着を持ってもらうか、様々な施策、工夫を展開しています。それは、商品やブランドに愛着を持つファンがその成長にコミットすることで「共創」の理念が生まれるという「共創マーケティング」の考え方にも通じるものです。

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共感とつながりを生むファンマーケティングとは

企業のサステナブルな成長に欠かせない「ファン」の存在。いまファンマーケティングが注目される背景・理由、手法や成功事例などを解説します。

 いま私立大学で、付属校・系属校を設立・提携する動きが活発になっています。高大連携のカリキュラムを組め、課題解決型の優秀な学生を育成することができるといった教育的な効果はもちろん、大学にとっては早めに入学者を確保することで経営が安定するというメリットがあります。そしてさらに重要な要素が、長くその学校に在籍する付属校からの進学者は、学校への愛着いわゆる愛校心が強い「ファン」となり、校風(=ブランド)を形作る核となる学生となっていく、ということです。友人や後輩、また保護者も含めて、周囲に学校の評判を好意的に広め、自分の子も進学させるなど、長きにわたりその学校のファンであり続けます。その学生を見れば、学校の雰囲気や校風が分かる。そうした存在として、大学のイメージを拡散し続けることになるのです。
 これと同じことが、ブランドのファンにも言えます。長くそのブランドを購買し続けるファンは、そのブランドの最良の理解者であり、そのペルソナを分析することなどで、ブランドのプロフィルや特徴が浮き彫りになり、企業の商品開発の方向性も決めやすくなります。ファンはそのブランドを体現する存在として、ブランドの顔でもあるのです。

 ファンは、一過性の消費ではなく、そのブランドを長きにわたって購入し続けます。ファンの購入基準は、ブランドの性能やスペック、デザインや価格などのプロダクト的価値ではなく、そのブランドの持つ世界観に価値を見出しているからです。
 そうしたブランドの世界観の醸成には、ある程度の期間が必要となりますが、ひとたび構築すれば、ファンはそれをリスペクトし、長くエンゲージメントを持つことができます。
 前述の川上徹也氏は「コンテンツマーケティングの先駆けの成功事例」として「ほぼ日」(ほぼ日刊イトイ新聞)を挙げ、「あのサイトは最初からモノを売ろうと思っていたわけではなく、純粋に糸井重里さんらが面白いと思うコンテンツを提供してきました。そのコンテンツに対する生活者の共感が深まり、ファンが集まったことで、ほぼ日が提供する手帳やTシャツ、家電などが売れていく。ファンはコンテンツに込められているストーリーや価値観、センスに共感しているから、他より値段は多少高かったとしても「ほぼ日」の商品を買うのです。糸井さんが最初からそれを意図していたわけではないかもしれませんが、結果的には理想的なコンテンツマーケティングになっています」と述べています。
(広告朝日:川上徹也/コンテンツマーケティング成功の鍵は会社としての志を明確にし、宣言すること)

 プッシュ型の広告が届きにくくなっている中、消費者が信頼を寄せるのが、友人・知人、家族などからのクチコミ、リコメンド情報です。noteプロデューサー/ブロガーの徳力基彦氏は、「ソーシャルメディアの普及により、一般ユーザーのクチコミの影響力が飛躍的に増したことが大きいですね。昔からマーケティングにおいてクチコミは重要だったのですが、その影響力は限定的なものでした。しかしSNSの時代になり、クチコミが広がるスピード、範囲が一気に増し、その影響力が大きくなりつつありますと述べています。
 また、そうした状況の中で、「ファンマーケティングの効果はデジタルの数値ではまだ可視化しにくいですが、立体的に考えれば投資対効果は高くなりやすいとも言えます。例えば「ネスカフェアンバサダー」では、本来であれば社員が担うべき業務をお客さまが喜んで行ってくれています。『共創』と呼ばれるようにお客さまが企業と一緒に商品を改善したり、世の中に広めたりするために貢献してくれれば、企業にとっての価値は大きいものになりますと、ファンの自発的な活動が継続的な需要を生むといった、ファンによるファンの拡張といった役割を指摘しています。(広告朝日:徳力基彦/計り知れない力があるファンのクチコミ コミュニティーづくりに欠かせぬメディアの影響力)
 ファンはそのブランドについて自らSNSやクチコミなどで積極的に発信、シェアしリコメンドすることで、周囲の新たな顧客獲得に強力な力を発揮します。いわばファンそれ自体が強力なメディアとなり得るのです。

 上智大学経済学部教授の新井範子氏(消費者行動論)は、顧客がファンとなっていくプロセスを、商品の品質や価格などブランドの基本価値に充足する「満足顧客」から、ブランドへの共感・愛着・信頼を寄せる「熱狂顧客」を経て、称賛やブランドへの提案などブランドの価値創発につながる「応援顧客」=コアファンとなっていく道筋として解説しています(新井範子・山川悟『応援される会社』光文社新書)。ブランドの価値は、ファンの厳しくも愛着のある視線によって鍛え上げられるということです。ファンとはそのブランドの本質的な価値を生み出す土台となると同時に、ブランドの品質をブラッシュアップする面でも欠かせない存在だと言えます。(広告朝日:新井範子/SNS上の声援を活用しながら リアルな「経験」を提供していく)

「応援者」の存在が支えるブランド20230306

ファンの声に耳を傾け商品がブラッシュアップされれば、ユーザー満足度が上がり、より一層コアなファンの育成にも結びつきます。ファンが単なる消費者ではなく、企業と一体となってブランドを育てていく存在として、共創マーケティングの主役となっていくのです。

 消費購買プロセスの中で、今注目されているのが、ミッドファネル、またリバースファネルへのアプローチです。リーチマックスから最終的な購買に結び付けることはもちろん大事ですが、安定的な売り上げ確保には購入後のシェアから再購入へと到るプロセスが重要です。ファンはこの「使う」「購入する」「人に薦める」といったリバースファネルのステージでリピート消費を行い、購入から再購入、購買ファネルを循環させる核となる存在です。ファンに働き掛けることによって、ミッドファネルを太くし、リバースファネルを強固なものとする恒常的なブランドリフトにつなげていくことができるのです。

8_デュアルファネル

参考:新聞広告はミッドファネルをリフトする | 広告朝日 
参考:マーケティングキーワード「デュアルファネル」 | 広告朝日

 ファンだけを相手にしていたら、認知度も上がらず、新規顧客を呼び込めないので、売り上げも伸び悩んでしまうのでは、といった疑問をよく耳にします。
 たしかにファン個々の、1回ごとの売り上げは多くはないかもしれません。ただし繰り返し購入することによってトータルの消費量は積み上がってきます。前述のパレートの法則に依拠するまでもなく、コアなファンが売り上げの大半を生み出していくという構図があります。
 また売り上げを伸ばすだけでなく、自らSNSやクチコミなどで積極的に発信、シェアしリコメンドすることで、周囲の新たな顧客獲得に強力な力を発揮します。繰り返しになりますが、いわばファンそれ自体が強力なメディアとなっていくのです。
 前述したように徳力基彦氏は、「ファンマーケティングの効果はデジタルの数値ではまだ可視化しにくいですが、立体的に考えれば投資対効果は高くなりやすいとも言えます。~うまく機能すれば、広告やマーケティングだけでなく、リサーチや商品開発、営業やサポートなどのコスト削減にもつながりますと述べています。
(広告朝日:徳力基彦/計り知れない力があるファンのクチコミ コミュニティーづくりに欠かせぬメディアの影響力)

 商品やブランドへの思い入れが強いファンは、商品の性能を変えることへの抵抗感も強く、それが商品リニューアルなどの障壁にならないか、といった疑問もあります。リニューアルすることで従来の固定購買層であるファンが離れることを恐れ、企業が新商品投入に二の足を踏むといった懸念もあるかもしれません。
 長く商品を購入、使用しているファンはそのブランドのよき理解者です。ブランドの特性を熟知しているからこそ、商品の不備や改善点もよく見えます。徳力基彦氏「消費者の心を動かし、購買に結びつくのは、自腹を切ってその商品を買い、実際に使い、その良さを実感しているファンの声」と述べています。(広告朝日:徳力基彦/計り知れない力があるファンのクチコミ コミュニティーづくりに欠かせぬメディアの影響力)
 愛着のあるファンの声を吸い上げることによって、商品開発、リニューアルのヒントを得て、それがブランド自体のブラッシュアップにつながれば、ブランドの価値も上がります。それが新規顧客を呼び込むことにもつながっていきます。コアなファンの存在は、ブランドの成長を促すエンジンともなるのです。

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共感とつながりを生むファンマーケティングとは

企業のサステナブルな成長に欠かせない「ファン」の存在。いまファンマーケティングが注目される背景・理由、手法や成功事例などを解説します。

 それでは、実際にファンマーケティングを進めていく場合、どのようなポイントに注意すべきか見ていきましょう。そして、それぞれのポイントごとに新聞とファンマーケティングの親和性、その活用のメソッドなどについて触れていきます。
 リーチマーケティングが主軸で強みのマス媒体である新聞と、個別のファンを対象とするファンマーケティング。一見正反対の方向性に見えますが、新聞メディアの持つ様々な特性・機能、また新聞社の持つ多彩なリソース、アセットを活用することで、ファンマーケティングをより効果的なものとすることができます。

 ファンマーケティングは性急に定量的な効果を求めるものではありません。より効率化を企図してPDCAサイクルを回すデジタルマーケティングと違い、ファンマーケティングやコミュニティーづくりは、効果を数値化、可視化することが難しい側面があります。
 前述の徳力基彦氏「お客さまとコミュニケーションをとり、ファンをつくるには、面倒で地道な作業が必要です。これまでマスマーケティングで効率的に新規顧客を獲得し、売り上げを伸ばしてきた日本の多くの企業にとっては、とても非効率な取り組みに思えるでしょう。そもそも多くの日本企業には、既存顧客とコミュニケーションをし、コミュニティーをつくって活性化するための部署がありません。よってそのための予算もない」とし、「最初はファンによるクチコミ効果を期待するよりも、まずは商品に関する顧客の声に耳を傾け、商品を一緒に考えるような「共創」の発想で始めたほうが長続きすると指摘しています。
(広告朝日:徳力基彦/計り知れない力があるファンのクチコミ コミュニティーづくりに欠かせぬメディアの影響力)
 博報堂ケトルの嶋浩一郎氏も、コンテンツマーケティングの成功例として「ほぼ日」(ほぼ日刊イトイ新聞)を挙げつつ「じっくりと時間をかけて独自の世界観をつくりあげた「ほぼ日」(ほぼ日刊イトイ新聞)のようなところです。あのような独自の世界観をつくりあげるには、時間や試行錯誤が必要です。すぐに結果が求められる環境では、それはなかなか難しい」と述べています。(広告朝日:嶋浩一郎/潜在欲求を言語化し、共感を生む コンテンツには無駄や余白が大事)
 ファンマーケティングの実践には「我慢」が必要です。ただし、ひとたび強固なファンのベースができれば、中長期にわたり利益をもたらし、ブランドのサステナブルな成長につながっていくことになります。

▼中長期にわたりエンゲージメントを構築する新聞読者
 新聞読者は、長期にわたり購読している読者が大半を占めます(朝日新聞購読者の内69.1%が10年以上購読「J-READ2021(全国新聞総合調査)」)。長きにわたりエンゲージメントを構築しているといってよいでしょう。新聞読者の高い購買力、社会意識の高さ、新聞が背景にあることの権威性、お墨付き感などが、ブランドの価値をより強固なものにしていきます。そうしたエンゲージメントの高い読者を母体に形成されるコミュニティーにより、中長期的なファンマーケティングを展開することが可能となります。

 顧客としてのファンを醸成することと同時に、自社の社員やその家族に自社ブランドのファンになってもらうことも大切です。日常的に多くの時間を自社の商品、ブランドに関わることに割き、長くその企業に留まる社員は顧客と共に企業のステークホルダーの基盤となる存在です。社員が自社の商品を自信と熱意を持って推奨できなければ、顧客やファンに熱意は伝わりません。
 佐藤尚之氏は、そうした社員を「最強のファン」にするために必要なインナーコミュニケーションとして、ミッション(自分たちの果たすべき役割は何か)、ビジョン(将来あるべき姿は何か)、コアバリュー(自分たちが共有している価値観は何か)を整備し、社員に会社の「目的地」を明確に示して、そこに向かう夢と一体感を提供することが重要だと指摘しています(『明日のプランニング』講談社現代新書)。
 顧客、ファンの熱量は、社員の熱量と共鳴します。自社商品・ブランドを愛する最強のファンとなった社員から、家族、友人・知人を通じて、その評判や価値が伝わっていくのです。

▼「お墨付き感」がモチベーションアップへ・高い新聞のインナーコミュニケーション効果
 その商品・ブランドが新聞やテレビなどマスメディアに取り上げられることで社会的な合意形成、お墨付き感が醸成され、それがファンにブランドを支持することの「自信」や「安心感」を与え、ファンがクチコミ、SNSなどで商品やブランドの良さを発信、広めるといった行動を後押しすることにもつながります。
 また、自社の商品・ブランドが新聞広告に出ることで、家族や友人・知人などにも話題となり、それが社員の誇り、モチベーションにもつながっていきます。新聞と組むことのインナーコミュニケーション効果は大きいと言えます。

インナーコミュニケーション・会話

 前述したように、強固なファン・コミュニティーを構築するのには手間と時間がかかります。
 博報堂コンサルティングの喜馬克治氏らはファン・コミュニティー運営のポイントとして三つのポイントを挙げています。「一つ目は、専任のコミュニティーマネージャーを置くこと。通常業務との兼務の形で人員を配置するケースがありますが、片手間になりがちな運用だとコミュニティーの火種はすぐに消えてしまいます。二つ目は、立ち上げ時にユーザーの期待値を高めすぎないこと。大きな花火を上げるのではなく、熱狂的なコアファンと小さな規模から始めて、魅力的な場を提供していくことが重要ではないかと思います。三つ目は、短期的な成果を追わないことはもとより、量的成果ではなく、質的成果を注視すること。例えば「100人で100ツイート」よりも「10人で100ツイート」の方が参加者の熱量は高い。経営者はそこを見極めなければいけません」(広告朝日:喜馬克治ほか/トライブは「見つける」から「呼びよせ、増やす」時代へ)

コミュニティー運営時のポイント20230306

 いきなり大規模のコミュニティーを組織化しようとするより、小さくてもファンの共感、感動、熱量を見極めてすくい上げ、それを核として持続的なエンゲージメントにつなげていく視点を持つことが重要です。

▼コミュニティー形成・運用のノウハウ豊富な新聞
 ファンマーケティング、またコミュニティー・マーケティングにおいて、企業の想定する消費者、生活者に対するアプローチ、エンゲージメントの構築のため新聞が果たせる役割について、前述の博報堂コンサルティングの喜馬克治氏新聞が持つ社会性と地域性がコミュニティーとの媒介になるのではないでしょうか。社会的イシューを持った人たちが意見を交わす場を提供したり、地域の情報に興味を持った人々を集めたイベントを企画したりと、コミュニティーの主宰者としてのパフォーマンスに可能性を感じますと述べています。(広告朝日:喜馬克治ほか/トライブは「見つける」から「呼びよせ、増やす」時代へ)
 新聞社にはメディアとして幅広い社会課題にコミットし発信しつつ、地域に密着したきめ細かい情報の厚みもあります。また、様々な性別・年代層を想定した多彩なジャンルのサイト、ファン・コミュニティーの受け皿があります。新聞社にはコミュニティー運営のノウハウ、実績が豊富にあり、企業の想定する層やターゲット、予算やスケールに合わせたコミュニティー展開に応えることができます

 誤解されがちですが、ファンマーケティングは、顧客を囲い込むことを目的とするものではありません。ファン優待価格や会員特典といった実利的なインセンティブも必要ですが、それだけでつなぎとめようとしても、「機能価値」より「情緒価値」に重きを置いているファンにはさほど魅力には写らず、関係性は長続きしません。上智大学の新井範子氏「企業が意図的にコミュニティーを作る必要はないと思っています。消費者はコントロールをされることを嫌いますから、いわゆる「囲い込み」をねらっても、短期的な成果にとどまるケースが多い。それよりも重要なのは、商品やブランドへの自然発生的な声援を活用する工夫です」と述べています。
(広告朝日:新井範子/SNS上の声援を活用しながら リアルな「経験」を提供していく)
 また、博報堂コンサルティングの喜馬克治氏コミュニティーに参加したい生活者は、企業の中立的な関与を重視しています。CtoCコミュニケーションは、興味を共有する人が結束していく一方、排他的になりやすい。そこを企業がうまくフォローしていくと、参加者はコミュニティーに対して安心感や信頼感が持つことができます」と指摘しています。(広告朝日:喜馬克治ほか/トライブは「見つける」から「呼びよせ、増やす」時代へ) ファンによって培われるコミュニティーは決して閉鎖的なものではなく、むしろ新規のファンに対して開かれたものであるべきです。それがファンがファンを呼び込むベースともなるのです。

▼ソーシャルグッド企業に信頼・共感を寄せる、社会的課題への関心高い新聞読者
 新聞読者は、SDGs への理解が深く、社会課題への関心やリテラシーが高いことがJ-MONITOR(※)ほか各種の調査から示されています。こうした社会課題に能動的にコミットする読者は、同じく社会課題に対して積極的な活動を展開している、ソーシャルグッドな企業に対して信頼を寄せ、共感を持ちやすいと言えます。
 前述したように、ファンとは、企業やブランドの社会課題へのコミットへの共感といった「社会価値」に対して真の価値を感じる人です。新聞読者は、そうしたファンの特性を元々兼ね備えており、新聞読者にアプローチすることにより、企業や商品、ブランドを能動的、自発的に応援していくファンの獲得から、中長期に渡って支えるコアファンの醸成につながる可能性を高めることができるのです。
参考:ESG経営が求められる今、新聞広告のメリットとは | 広告朝日

 ファンとの接点を増やす場として、ネット上にファン・コミュニティーを作ることは有効な施策です。場所や時間の制約なくいつでも気軽に参加でき、ブランドに対する思いを同じファンと交歓、共有することで、ブランドに対する愛着を深めることになります。
 また、拡散力を持ったファンとの接点として、SNSは重要な役割を果たします。日本国内の美術館の中でSNSフォロワー数ナンバー1を誇る森美術館で、SNS施策ほかプロモーションを担当する洞田貫晋一朗氏は、ファンに対するSNS施策で留意することとして、「SNSは低コストで大きな効果を出すことも可能ですが、そのためには正しい戦略と分析のもと、一つひとつの投稿を入念に練り上げる必要があります。それは時間も労力もかかり、片手間でできることではありません。ですから企業がSNSマーケティングに本気で取り組むなら、社内にある程度、SNSに専念できる担当者を置くべき」と言います。(広告朝日:洞田貫晋一朗/ファンとの絆を深め、リアルな体験の価値を高めるためにもSNSは有効)ロイヤルティの高いファンが感じる価値については常に目配りをする必要があります
 そして、ファンとの接点はネット以外にも、販売の現場や広報など、様々なシーンが想定できます。「オフ会」という言い方もありますが、ネット上のコミュニティーから飛び出したリアルなコミュニケーションの場を提供することで、ネットコミュニティーでのつながりがより強固なものになり、ファンの熱量も上がっていくことになります。洞田貫氏はまた、「美術館を実際に訪れた人がそこで感動したり、驚いたりした体験を発信するSNS投稿が、人々の強い共感を呼び、「私も行ってみたい」との行動を促す。またSNSを活用することで、リアルな場に新たな価値を生み出すことも可能」と言っていますが、ファン同士の交流、企業との意見交換、リアルな体験を提供することも重要なファクターとなるのです。
また、新井範子氏「市場が成熟して差別化が難しくなっているECサイトの分野では、「ゴー・フィジカル」、すなわちリアル店舗に足を運んでもらうための施策が業界の関心事となっています。ネットコミュニティーもその流れにあり、「いかにリアルな経験を提供できるか」も課題の一つだと思います」と述べています。(広告朝日:新井範子/SNS上の声援を活用しながら リアルな「経験」を提供していく)

SNSでのコミュニケーション

▼催事・イベント実績豊富な新聞・ファンとの接点を多角的に提供
 新聞社は、様々な催事・イベント運営の実績を持ち、豊富なノウハウを持っています。ウェブだけでなく、紙面上で、また様々な催事・イベントなどリアルな場を提供してきた実績も豊富です。ファンとの接点を多面的に提供できる機能、役割を持っていることが新聞の強みと言えます。それが、継続的なファンとのエンゲージメント強化に寄与することになるのです。

 ファンマーケティングを推進する上で不可欠なのは、ファンの熱量、感動、共感をいかに維持し、高めていくか、です。ファンはブランドに対する愛着が強いだけに、ブランドへの期待値も高く、常に新しい何か、ブランドの世界観をより強固にする材料、ストーリーといったものを提供し続けないと、期待が失望に変わってしまうことになりかねません。ファンとの接点を増やし、ファンとのエンゲージメントを育てていくことは不可欠です。
 そうした、ファンの支持を強くする方策として、佐藤尚之氏は、そのブランドの価値そのものをアップさせる「共感」、その価値を他に代えがたいものにする「愛着」、その価値を提供するブランドの評判をアップさせる「信頼」の三つをキーワードに挙げています。(『ファンベース』ちくま新書・2018年)
 膨大なリソースやデータ、過去の蓄積を持ち、高い編集力・企画力を持つ新聞社は、ファンをひきつける魅力的なコンテンツを提供し、中長期に渡って関係性を強固にして、ファンとの「共感」「愛着」「信頼」を獲得、維持していくための実績、またポテンシャルを持っています。これまで見てきたファンマーケティングを成功に導くポイントからも、新聞社は最良のパートナーとなり得ます。

 ファンマーケティングを進めるにあたり、コミュニティーの核となるのはどんな人たちなのでしょうか。良質なコミュニティーには、その影響力の強さにより、ブランドへのこだわりを持ったファン度の高い人々が多く集まります。こうした核となる層を「J-READ(全国新聞総合調査)」のデータを使って抽出し、新聞との関わりについて探ったレポートを紹介します。
参考:コミュニティーの情報源として欠かせない新聞 | 広告朝日
 ここでは、ブランドのファンになる、コミュニティーの核となりそうな人として、「ブランド・メーカーにこだわりがある」層に注目しています。この層は商品ブランドに対してうんちくを語ることができ、そのため周囲からアドバイスを求められるなど、良質なコミュニティーをつくる上で欠かせない層と言ってよいでしょう。そうした層はネットとの親和性が高く、新聞(広告)が重要な情報源であり、企業情報の情報源としても活用しています。コミュニティーの形成、運営において核となるファンにとって、新聞は欠かせない情報源ということを改めて示す結果となっています。

10_情報限や確認メディアとして利用されている新聞

 朝日新聞社はファンマーケティングを推進するため、マスメディアとバーティカルメディア、オンラインメディアとオフラインメディアメディアをブリッジし、ファンマーケティングにおいて最大の効果を上げるための、ワンストップで解決できるソリューション・プログラムを多く持っています。ファン・コミュニティーの形成、リアルとネット双方でのコミュニティー運営、それらの豊富なノウハウ、実績を持つことはもちろん、そうした施策を広く、直接的に訴求できる紙、デジタル、動画、リアルイベントなどの多彩なメディアを有しています。
 「何から始めたらよいのか」「自社の商品、ブランドに合ったファン・コミュニティーを作りたい」「ファンの声を商品開発に生かしたい」「ファン層を拡大したい」といった要望に応え、企業に最適なファンマーケティング施策を提案し、共創のお手伝いができます

 朝日新聞社では50を超える多彩なデジタルメディア、コミュニティーを持ち、男性、女性、若年層、シニア層の方々、趣味嗜好などに合わせ様々な形で生活者とのエンゲージメントの構築を図っています。各メディアにはエンゲージメントの高いコミュニティーが存在し、各ユーザーに対し、様々なオンラインやリアルでの活動を通して、継続的なコミュニティーマネジメントを行っています。広告主の商品・サービスの訴求にあたり、各コミュニティーの読者には「どんなアプローチが有効なのか」「読者のインサイトはどこにあるのか」を提案することができます。複数のターゲットに一度にアプローチすることも可能で、デジタル、動画、リアルイベントなど複数のメディア、ツールを組み合わせた展開が容易にできる、というのも特徴です。
Asahi Digital Solutions
朝日新聞デジタルメディアガイド

11_朝日新聞社デジタルメディア_マトリクス
バーティカルメディア・各編集長

 こうした朝日新聞社の持つ多彩で幅広い領域を網羅したウェブメディア群について、徳力基彦氏は、新聞社というメディアがコミュニティーをつくることの意義をこう述べています。「メディアにとっても、広告主にとっても非常に有益なことだと思います。日本のメーカーにとってのお客様は流通や小売りで、消費者との直接の接点をもっていません。個人情報保護法の影響もあり、キャンペーンなどで集めた貴重な顧客データも捨てがちです。そこでまずは新聞や雑誌などの読者コミュニティーを、自社の製品やサービスのために活用する、と言う発想も有効です。とくに新聞読者は社会的なリテラシーが高く、ある程度の経済力をもっています。そのようなクラスターとつながれる価値は、企業にとって非常に大きなものがあるでしょう。またSNSのクチコミは、マスメディアとの組み合わせで、より大きな影響力を持ちえます。最近は新聞広告のようなアナログの広告の方が、SNSで拡散されやすい傾向もあります。今後は、ファンのクチコミを新聞の広告企画と組み合わせることで効果を上げるような取り組みも増えてくるでしょう」(広告朝日:徳力基彦/計り知れない力があるファンのクチコミ コミュニティーづくりに欠かせぬメディアの影響力)